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日本の黒い夏 冤罪のodyssのレビュー・感想・評価

日本の黒い夏 冤罪(2000年製作の映画)
3.5
【遠野凪子さん】

2000年に作られた映画ですが、最近BS録画にて鑑賞。

冤罪事件として名高い松本サリン事件を扱っています。
周知のように、この事件では被害者の男性が薬物の専門家だということもあって、警察からは参考人扱いながら(サリンのダメージから体が回復していないのに)長時間にわたる尋問を受け、マスコミからは真犯人扱いされ、心ない松本市民からは嫌がらせを受ける、というさんざんな目に会いました。

この映画はその過程を丹念に追っていますが、高校生の放送部員が地元のTV局を訪ねて、なぜ冤罪が起こったのか、マスコミの一方的な報道はどうしてなされたのかについて問いただすという形式をとっています。

ここで放送部員の女子を演じる遠野凪子さんがいい。まっすくで真摯な高校生の役どころがぴったり。私はこういう、きりっとした顔立ちの女の子に弱い(笑)。この映画、彼女の代表作じゃないでしょうか。私はこの映画の数年後に作られた『海は見ていた』に出演した遠野さんを(だいぶ前ですが)スクリーンで見ていますけど、魅力という点ではこの『日本の黒い夏』に遠く及びませんでした。

冤罪の構図、警察の見込み捜査、マスコミの無責任、一般市民の心ないしうちなど、この種の映画ではおなじみの展開ではありますが、冤罪が明らかになってもまた別の事件で同じ誤りを繰り返すのでは進歩がありませんね。

私の見るところ、この事件では初期の段階でどういうタイプの毒ガスによる被害かは分かっていたのだから、その線での科学捜査を第一にするべきだったと思う。もっとも専門家も一人では心許ない。この映画でも、サリンはバケツ一杯でシロウトでも簡単に作れるとマスコミに請け合う専門家が出てきて、マスコミ報道をミスリードするのですが、後で別の専門家から逆に、作るのには相当の手間がかかるし機材も必要だと言われます。専門家だってアテにならないわけで、複数の専門家の意見を聴くことが肝要だということが分かります。
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