AONI

日本の黒い夏 冤罪のAONIのネタバレレビュー・内容・結末

日本の黒い夏 冤罪(2000年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

「ニワトリが先か? 卵が先か?」報道ジャーナリズムは奥深い。事件が高度化すれば、情報の真偽を見分けられずに誤報が流される。しかし頑張れ小マスコミ!

「マスコミが世論の意思を決定するのか? 世論がマスコミの報道姿勢を決定するのか?」 恐らくマスコミ側から視聴者への情報の方が世論への影響が大きいだろう。しかしそのマスコミを暴走させるかどうかは、視聴者の良識も問われているのではないだろうか。情報が溢れるこの現代社会において、冤罪が防げなかったこと。マスメディアが暴走したこと。監督の興味はあの大事件よりもそっちにあったんだろう。

あと、サリン生成の件も興味深かった。未知の殺人ガスの登場。マスコミ達は専門家の情報を鵜呑みにするしかない。事件が高度化すればするほど、情報の真偽を見定めることが出来ずに誤報が流されるのだろう。

高校生と小マスコミの視点からあの大事件を見直すので、迫力不足はいがめない。おまけに熊井啓は、デビュー時から妙に枯れた演出をする職人監督だから、骨太だが淡々としている作品が多い。(『帝銀事件 死刑囚』、『海と毒薬』等) 今回も画期的な演出シーンを挙げるのは難しい。しかし、相変わらず取り上げる視点の鋭さとストーリー運びの上手さで高得点。

なんだかんだいって、馴れ合いの大マスコミが取り上げないスクープを掘り当てるのが小マスコミの役目。過激報道もあるが、日本のジャ-ナリジムの一翼を担っているのは確かだと思う。正しい報道を求めるとともに、頑張れ小マスコミ!
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