あき

いのちの食べかたのあきのレビュー・感想・評価

いのちの食べかた(2005年製作の映画)
4.0
“Unser täglich Brot(英題“Our Daily Bread“、邦題「いのちの食べかた」)”独、92分、2005
お店の美味しそうなお料理の写真を頻繁にSNSにupするような者として一度は観ておくべき映画だと理解しておきながら、豚や鶏の丸焼きのように“姿“が残っていると途端に苦手でなかなか勇気を持てずにいたのをようやく鑑賞。
この映画は、“食“に関わる人たちのドキュメンタリー映画で、時折り作業員同士が短く言葉を交わす以外ほぼ全編機械の作業音のみが淡々と流れるのみの無声映画。
大規模農場における徹底的な機械化での作業シーンはもはや詩的な美しさで観る者を圧倒する。
一方、牛豚鶏魚の屠殺シーンはやはり心臓の弱い方には決して勧められない衝撃的な映像が延々と続く。
しかし思わず目を背けてしまうようなシーンも、作業員は皆、仕事として寡黙に淡々と効率的にこなしていく。
なかでも、牛を捌く前に感電死させるシーンは、牛も状況を間違いなく理解していて、明らかに怯えて大きく身体を震わすところは、わかっていてもやはり言葉を失い虚無感に陥る。
でも、食を通して生かされてる我々は、この現実に目を背けず凝視しなければならず、決して偽善に陥ってはならないと腹を括らなければならない。
いつも素敵なお料理を“美味しい、美味しい“っていただけている背景には、このような方々の存在を忘れてはならず、そしてその食材を見事に見た目も味も美味しく作ってくれる飲食の方々に改めて感謝の思いを馳せる映画だ。
あき

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