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或る殺人のクレセントのレビュー・感想・評価

或る殺人(1959年製作の映画)
4.0
公判は終わった。あとは審判を待つだけだ。それも12人の陪審員がね。主役の弁護士の相棒が独り言を言った。12人が一室に消える。12の違った考えと心。12通りの人生。12人分の目、耳、体格、体形。そしてこの12人が一人の人間を裁くのだ。顔も知らなかった人間をね。12人は心を一つにして決める。人間の無秩序な魂にそれができるとはね。まさに奇蹟だ。陪審員に栄あれだよ。この言葉、まさに監督のO.プレミンジャーが言いたかったことで、彼は法科の出身だけに陪審員制度に疑問を持ったのかもしれなかった。そうこの作品は彼の代表作の一つだが、邦題は”或る殺人”だけなので短すぎて内容までは追えなかったが、原題は”Anatomy of a Murder”。ある殺人罪を”解剖”して有罪か無罪かを徹底的に論じ合わせたかったのだろう。おかげで160分もの長尺のうち8割が弁護士と検事の論争に終始させた、まさしく殺人を徹底的に分解したかったに違いなかった。おかげでアカデミー賞のノミネートにも恵まれた。ところで彼の処女作品に”Laura殺人事件”があるが、こちらの原題は”Laura”だけであるが、こちらのほうは邦題が長すぎる。事件を追う刑事が知らず知らずヒロインに魅せられていく物語で、挿入された甘美な曲”Laura”は、後でシナトラやマティスによって歌われて大ヒットした。個人的には、J.スチュアートは好きで、一度カハラ・ヒルトンで見かけたことがあるが、プリンストン大卒で長らくハリウッドの大御所として、G.クーパーらと良きアメリカ人俳優として活躍した。
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