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或る殺人のBOBのレビュー・感想・評価

或る殺人(1959年製作の映画)
4.0
オットー・プレミンジャー監督、ジェームズ・スチュワート主演の傑作法廷ミステリー。

ミシガンの弁護士が、自分の妻をレイプしたバーの店主を射殺したと主張する陸軍中尉を弁護する。

"As a lawyer, I've had to learn that people aren't just good or just bad. People are many things."
  
圧巻。160分のうち大半の時間が法廷を舞台に展開される超本格法廷劇。原題の通り、1つの殺人事件を、人体解剖をするかのごとく、細かく丁寧に切り分けながら、その真相を解き明かしていく。見応えしかなかった。

視覚的には地味な映像が続くが、構図は決まっているし、ジェームズ・スチュワートのユーモアに富んだ巧妙な話術は冴え渡っているし、検事と弁護士の白熱する弁論合戦は興味深かったので、最後まで飽きることはなかった。耳から得る大量の情報を処理し続けることを強いられ、鑑賞後どっと疲労感に襲われた一方で、本物の1つの裁判を丸々見届けたかのような達成感も味わった。

『スミス都へ行く』以来となる"雄弁家ジェームズ・スチュワート"。類稀なる話術に感動すら覚えた。情熱的でいて冷静、スマートでいてユーモラス。とても有能な弁護士っぷりだった。役柄上仕方ないのだろうが、『スミス都へ行く』より本作の方がやかましくなくて好き。

ヒロイン・ローラを演じるのは、『酒とバラの日々』や『オーメン』のリー・レミック。軽快なパンツルックと美しいブロンドの髪、オープンな性格で、男たちを魅了する。ファム・ファタールを想わせる彼女の存在が、裁判の行方を最後まで読ませなくする大きな要因となっていた。

伴奏は全てジャズ。上品で小洒落た大人の雰囲気が漂っている。

『悲しみよこんにちは』に続いて、タイトルクレジットは切り絵アニメーション。

パンティ弁論と、「弁護人が邪魔で証人が見えません。」は笑った。

"Twelve people go off into a room: twelve different minds, twelve different hearts, from twelve different walks of life; twelve sets of eyes, ears, shapes, and sizes. And these twelve people are asked to judge another human being as different from them as they are from each other. And in their judgment, they must become of one mind - unanimous. It's one of the miracles of Man's disorganized soul that they can do it, and in most instances, do it right well. God bless juries."

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