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カンゾー先生のtakのレビュー・感想・評価

カンゾー先生(1998年製作の映画)
4.0
敗戦色が濃厚になってきた時代に、岡山の町医者として日々奔走していた赤城医師を主人公にした人間ドラマ。診てもらった患者がほぼ肝臓炎と言われるから、カンゾー先生と呼ばれている。現在のようにウィルス性肝炎が知られていない時代だけに、誰にでも肝炎と言うヤブ医者と誤解されていたのだ。日々駆け回るカンゾー先生は、親を亡くしたソノ子を看護婦として雇うことになった。生活のために淫売を繰り返していた彼女は、肝炎撲滅の為に情熱を傾ける先生を知り、その助けになりたいと思うようになる。

先生をとり巻く個性的な面々が楽しい。女好きな和尚、オンナの武器をチラつかせる遊廓の女将、女将に言い寄る軍医、モルヒネ中毒の外科医。厳しい時代に庶民が懸命に生きている姿も描かれている。今村昌平監督作は70年代以降の有名作4、5本しか観ていないけれど、こうした描写は共通しているように思える。

脱走してきたオランダ兵捕虜を交えて、男たちとソノ子が肝炎を引き起こす正体を解き明かす為に顕微鏡を囲む。その後に続く理不尽な出来事。戦争が人を狂わせる。身勝手にさせる。カンゾー先生はわかってくれる人がいない日常から、学会で仲間に認められて喜びを味わう。しかしそれがさらに研究に没頭させ失敗につながってしまう。

キャスティングがいい。クセのある脇役が多い柄本明が、信念ある赤城医師を力強く演じている。若々しい麻生久美子がまぶしくて仕方ない。世良公則演ずる外科医、フランスの俳優ジャック・ガンブランもいい仕事。ラストには、ユーモラスな味を持たせながらも、反戦のメッセージを強く印象づける。

今まで敬遠してたけど観てよかった。
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