戦時下に於ける町民の営みはただひたすらSEX!SEX!SEX!🐙🦑
アナーキーな風刺喜劇の逸品で、抑圧された性(生)と国家を対比させながら柄本明演じるヤブ医者の肝臓先生を巡るてんやわんやな大騒動を描く今村昌平流のシニカルな群衆劇。
ヒロインの麻生久美子(本作がデビュー作)が若くて綺麗だ。90年代の邦画とは思えない昭和臭が凄く出ている。原作の坂口安吾の短編小説は昔読んでいた。国家権力に虐げられる民衆がある意味、ストックホルム症候群となり無気力な奴隷みたいになっているある種のディストピアがある。
戦争に負けると分かっていながら竹藪でB29を絶えず突く辺りの精神性は、現在の北朝鮮とほとんど変わらない。ちなみに音楽を担当するのはフリージャズの大御所山下洋輔で、同監督の『黒い雨』と比べて少しお洒落なムードが特徴。
そんな狂った戦時下で、間違った道をひたすら進んでいく「外道」の医師カンゾーがとても魅力的に描かれている。狂っているのは奴らか俺か❓そんな不条理と狂気性を感じる大人のための寓話であり、同じく原爆を題材にした映画『黒い雨』よりも面白いと思う、個人的に。
やっぱ、今村昌平はこういう皮肉に満ちたコメディがよく似合う。グロテスクながらもバイタリティある庶民劇となっている。晩年の傑作。