三隅炎雄

旗本退屈男捕物控 七人の花嫁の三隅炎雄のレビュー・感想・評価

4.0
松田定次・萩原遼『旗本退屈男捕物控』前編&後編。戦後初の退屈男、比佐芳武脚本で『捕物控』とあるように後のものよりミステリ色が強い。

戦前の作品とは12年開きがあることから、前編「七人の花嫁」は世界設定も絡んで登場人物が多く、横山エンタツや二代目桂春団治らの寸劇サービスも加わってややもたつくが、短い凝ったカットを畳み掛けるように繋ぐ松田独自の娯楽演出はじゅうぶん堪能できる。エンタツと春団治のかけあいは映像としても貴重。

前編の多様な登場人物を一気に大名屋敷に集めて解決する推理と怪奇とアクションの後編「毒殺魔殿」は凝縮された展開で無類の面白さ、脚本演出共に絶好調だ。前編までのあらすじを、エンタツ・春団治・團徳麿・水野浩・桂五郎があほだら経と講談で纏める破格のオープニングも嬉しい。この作品などを見ると、沢島正がいかに松田演出をお手本にしているかが分かる。
前後編通して、深井史郎の音楽もさりげなくモダン、洒落たものだ。
三隅炎雄

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