ぽち

花の恋人たちのぽちのレビュー・感想・評価

花の恋人たち(1968年製作の映画)
3.0
強烈な昭和の香りと、吉永、十朱、山本の光り輝く美しさを愛でる作品。

かなりマニアックな部類に入るのだが、昭和を知っている年代にはたまらない楽しさがある。

しかし映画としてはかなりポンコツで、普通に鑑賞してしまうと脱力感しか残らないだろう。

原作の「女の教室」は未読だが、今作に限って言えば、ずれた倫理観や、笑えてしまう「友情」の表現など、人の根本に切り込むことが一切できていない、時代に流されたストーリー展開で、オチも「それでいいの・・・」って言う投げ出しよう。

しかし、最初に書いたように、そこらへんは全部パスして、生活様式や小物にいたるまで、ぎっしり詰まった「昭和」を眺めて楽しめる。
無理やりねじ込んだタイアップ商品のミシンやジュースの名前までが微笑ましい。

そしてなんと言っても美女三人の輝きは目の保養と言えるだろう。
ただ綺麗というより、素晴らしい歳のとり方をしている三人の若かりし頃という意味も含め、ため息の出るシーンが多い。

その中でも吉永は別格なのは言うまでもない。

一般の方々には決してお勧めできないが、昭和を懐かしみたい人やサユリストは必見の作品。



余談。
「昭和の香り」なのだが、ちょっと冷静に分析すると、今作で出てきたのは昭和43年のハイソな方々の生活が主になっている。

山本陽子の医者の一家や、十朱の弟と暮らす大きな家。また最先端である病院内での生活。
例外は吉永が暮らしていた田舎の病院ぐらいだろう。

今で言えば田園調布や麻布に家のあるお金持ちの生活がメインということだ。

では、なぜそれが一般人が感じる「昭和」に繋がるかというと、この時代は5年ほどで、ハイソな生活が一般に下りてきていた時代。
なので昭和50年と言えば、だいたい全家庭がこの程度の生活レベルとなっていたのだ。

高度成長期のおかげだろうが、すごいスピードで一般人の生活が向上していた時代。

なので、今作の制作時には「カッコイイ上流社会のお家」という映像で撮ったのだろうが、数年後には普通の家庭と変わらなくなっていて、今見ると懐かしく見えるってことだ。

公開当時はこれが夢の生活だったのだろう。微笑ましい。
ぽち

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