菜緒都

生きものの記録の菜緒都のレビュー・感想・評価

生きものの記録(1955年製作の映画)
4.3
「十二人の怒れる男」イズムも感じた。要所要所のシーンに。映画は今作の方が先なんだけど。あと「十二人〜」よりミステリー感がない分、純度が高い崇高な映画にも見えた。比べるのはお門違いなんだけど。

黒澤作品としては「野良犬」の後見たから、演出、撮り方が急にレベルが上がった気がした。「お前何様やねん」て感じだろうけど。
最初の通り過ぎる電車からの室内ショットは「いきなり決まったー!」って思ったし、高架下の会話の長回しショットとかも車の手配とか奥の歩行者とかの準備がすごかったんだろうなと思った。
家族の大人数ショットの捌き方はお手本のようだったし。
終盤の階段ショットはロケーションの使い方のお手本中のお手本感。
火事の後の工場の、引きの俯瞰ショットは後の時代劇のショットに通ずると思った。みんなでわちゃわちゃしてる感じが。

キャラ描写的には、ジュースを家族全員に渡す演出がニクいなーって思った。

「死ぬのはやむを得ん。だが殺されるのは嫌だ。」この一言に尽きる作品。

そうです。僕たち現代人は狂っていないとマトモに生きられません。
菜緒都

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