シンタロー

ピクニックのシンタローのレビュー・感想・評価

ピクニック(1955年製作の映画)
3.3
ブロードウェイでロングランしたウィリアム・インジの戯曲を、舞台でも演出を手掛けたジョシュア・ローガンが映画化。
労働祭休日の朝、カンザスの田舎街。無一文のハル・カーターは、大学時代の友人で実業家の息子アランに職を紹介してもらおうと会いに来た。通りがかりに老女ヘレンの家で庭掃除をして朝食にありついたハルは、隣のオーウェンズ一家、シングルマザーのフロー、アランの婚約者で容姿端麗な長女マッジ、容姿に自信がない文学少女の次女ミリー、同居人のハイミス女教師ローズマリーと知り合う。この街では労働祭にピクニックへ出かける風習があり、ハルもアランやオーウェンズ一家と参加することに…。
はっきり言って主人公のハルは口ばっかりの調子乗りで、金も職も無い人生の負け組。一方、元フットボールの花形で、ワイルドさと社交性を持っている。それぞれ悩みを抱えていて、狭い世界で刺激に飢えている女性陣は、初対面でいきなり肉体美まで見せられ、次第にタガが外れていく有様を、たった一日の出来事として描いていくところが面白い。肝心のピクニック?という名の夏祭りみたいな行事の中盤は間延びしていてしょうもない。終盤名曲"Moonglow"と共にハルとマッジが踊るシーンは、映画史に残る美しいシーンと称されています。実際美しいのですが、その直後、嫉妬と酒に狂ったローズマリーがとんでもない醜態を晒し、さらにハルの実態を大勢の前で暴露するという、怒涛の展開からクライマックスへの流れは見どころ。ウィリアム・ホールデンとキム・ノヴァクのファンなら、もっとキュンキュンして楽しめたのかもしれませんが、自分は…すみませんという感じです。
主演のウィリアム・ホールデンは人気絶頂期で、この年のドル箱スターランキング4位。本作は全米年間興行成績8位のヒット作となりましたが、どう見てもこの役には老け過ぎ。実際37歳ですが、かなりの酒飲みで他の俳優に比べると、見た目の老化が早かったように思います。本人も気にしていたようで体だけは鍛えて若々しく見せていますが、やたら脱ぎまくるのもどうかと思いました。ヒロインはキム・ノヴァク。初の大きな役で22歳。なぜか初々しさや若々しさが感じられません。街一番の美女で祭りのクイーンに選ばれる役ですが、そんなに美しいのかな。彼女の映画を見るたびに疑問。でも、ほぼ毎回美女の役なので、そうなのでしょう。肝心の芝居も、主役なのに2人ともやや物足りない感じ。その分、助演陣の芝居は出色。ミリー役のスーザン・ストラスバーグは、ご存知リー・ストラスバーグの娘。ブサイク扱いされる役ですが、個人的にはキム・ノヴァクより全然可愛いと思う。母娘、姉妹の関係性の描写は、彼女の芝居のお陰で深みが増していると思います。ラストの振る舞いも素敵です。ローズマリー役のロザリンド・ラッセルと、その恋人ハワード役のアーサー・オコンネルの芝居も素晴らしく、笑いとシリアスさが絶妙で、作品の良いスパイスになってます。
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