明石です

サバイバル・オブ・ザ・デッドの明石ですのレビュー・感想・評価

4.0
ジョージ・A・ロメロの遺作。なんで評価は低いのか全くわからないくらい面白かった。台詞は洗練されてるし、ストーリーも意外と奥が深い。ロメロ作品だということを考えると(人によっては)△かもだけど、ロメロ作品だということを考えなかったら普通に面白いと思う。なんにせよPOVの前作よりずっと良い。

ゾンビ化した住民を始末しすぎて村八分にされ故郷の島から追い出された島の長が、「ゾンビのいない平和な島」という嘘の宣伝を流し、強者を募って故郷せ復讐しに帰る、というちょっぴりサイコで込み入ったプロットとても好き笑。そして、孤島の中なら(理論上)ゾンビを全滅させて平和に暮らせるのでは、という『ドーンオブザデッド』のアイデアをちゃっかり拝借してるのも面白い。言ってしまえばロメロ作品のリメイク作をさらにリメイクしてるようなものだものね。

それから、この監督がずっと押しきた「私たちvs彼ら」を、孤島という限定された環境に圧縮した感じのテーマ設定が目を引く。たしかに他作よりスケールは小さくなってるけど、その分テーマが凝縮されてて見応えあると思う。ここを見ればいい、というのがわかりやすい。でもその意味で、この一作だけを見て評価するより、この人のフィルモグラフィにあらかた触れた後で見たほうがフェアに評価できそうな気はする。

前作『ダイアリーオブザデッド』で、盗賊と化した悪党州兵が主人公、、前作と世界線を共有してるのって、ロメロ映画では案外初めてなはず。そして、ゾンビの指を噛み切った男が感染するという、今までありそうでなかったシーンがある。そもそもなぜゾンビに噛まれたら感染するの?というこれまで曖昧にされてきた疑問に対し、ゾンビの血液が体内に入ることで感染するのだという答えが、ゾンビ映画のゴッドファーザーによって(それも遺作で)示されてるの興味深い。

「死者が蘇ることに恐怖は感じない、始末は簡単だからだ。それが友人でなければ」というロメロ映画の総決算みたいな冒頭の台詞がとてもとても心に残る。思えばこの監督、最後まで爆速ゾンビを採用しなかったなあ。アクションよりも愛憎劇。死者であるゾンビを通して、死者よりも醜い生きた人間を描く。そういう哲学を遺作まで貫いたロメロ氏、最高にカッコ良い。

「小さな町は嫌いじゃないが、人間まで小さくなる」←なんとなく覚えてたのでメモした台詞。とくに意味はないけど笑。
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