荒野の狼

不滅の恋/ベートーヴェンの荒野の狼のレビュー・感想・評価

不滅の恋/ベートーヴェン(1994年製作の映画)
5.0
本作は2時間の映画で、ベートーヴェンの「不滅の恋人」候補が3人登場し、オムニバス形式のような構成で飽きさせない。本作の「不滅の恋人」の恋愛ストーリーに関しては、史実とは抜きに楽しみたい。恋愛の成就は、時に、綱渡りをしているような危うい瞬間があり、そうしたときは、人の行動・言葉の微妙なタイミングで人生の振り子が揺れてしまう。本作のラストは、まさにそうした瞬間を描いており、これはノーベル賞受賞作家のパウル・ハイゼの小説のハイライトを思わせるような出来である。
「不滅の恋人」が実際に誰なのかについては、映画のパンフレットでは作家の青木やよひが自説を書いているが、これは現在でも異説がある。映画のストーリーはフィクションであるが、ベートーヴェンに関わった多数の実在した人物が登場し、またナポレオン軍やメッテルニヒも登場して歴史背景がわかる。
映画の視聴後に、映画のパンフレットを読んで鑑賞を深めたが、パンフレットには、映画の中の演奏曲目と、それがどういったシーンで使われていたのかが解説されており有用。DVDにはバーナード・ローズ監督のコメンタリーをOnにでき、またローズのインタビューが特典に所々に入っており、またパンプレットにもコメントがあるが、ローズは「ベートーヴェンは自分が感じていたことを、そのまま音楽で完全に表現できる能力」があるとしている。本作では、ローズがベートーヴェンの曲をシーンにあったものを選曲することで、シーンに登場人物の想いなどが込められた表現になっていると言える。演奏はロンドン交響楽団、マレイ・ペライア(ピアノ)、ヨーヨー・マ(チェロ)など。
日本で発売されているDVDは高価だったので、海外発売のDVDを購入。リージョンが異なるので、リージョンフリーの機器などで再生する必要あり。言語は英語。ベートーヴェンが英語で会話をしながらも、手紙はドイツ語であるなど、違和感を覚えるシーンはある。
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