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不滅の恋/ベートーヴェンの留のレビュー・感想・評価

不滅の恋/ベートーヴェン(1994年製作の映画)
1.5
オープニングは死の床のベートーヴェン。《荘厳ミサ》~「キリエ」が流れ、ラスト葬儀のシーンで「アニュス・デイ」となるのはいい。Op.130の「カヴァティーナ」が使われるのもいい。
《皇帝》第2楽章は映画でよく使われるが音楽だけ聴くよりも映像と一緒の方が美しいかもしれない。
《クロイツェル》の描写もいいかな?史実の黒人ヴァイオリニストや《クロイツェル》の本質を愛欲と絡めたのはトルストイの小説を引用したのかもしれない。
だがベートーヴェン好きには絶対に許せない捻じ曲げ、歴史歪曲、捏造については弾劾しなければならない。
甥っ子カールの母親が「不滅の恋人」で、カールがルートヴィヒの実子だったなんて大嘘ですから。ショルティは脚本読まなかったのだろうか?
大のベートーヴェンマニア、ロマン・ロランのベートーヴェンをモデルにした教養小説《ジャン・クリストフ》にも、若き日のクリストフの恋人が弟とも付き合っていて、クリストフが激怒するエピソードがあるが、これは高潔な人間と下劣な人間の対比を描いているのであって、この映画で描かれるような事はあり得ない。
ヨハンナ(カールの母親)は第九の初演に接してベートーヴェンを理解したと言うが、テプリッツでの逢引は第九よりずっと昔のことじゃないですか!
《皇帝》協奏曲はベートーヴェンがピアノを弾かなかった初めての曲、ウィーンでの初演はチェルニーだし、この映画ではベートーヴェンが弾いて大失敗してるのに、その後もピアノトリオを演奏したりと描き方が杜撰過ぎる。
「日本は太平洋戦争でアジアを侵略しなかった」級の大嘘音楽家「伝記」映画、というかバーナード・ローズによるベートーヴェンのファンタジー映画というベきか。
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