ハル奮闘篇

ネメシスのハル奮闘篇のレビュー・感想・評価

ネメシス(1992年製作の映画)
3.8
【 金はなくとも心は超大作! 予算が無い中でどう面白く撮るか? B級アクションのお手本みたいな映画! 】

 「火薬と筋肉を愛する会」に参加させていただきます!
 (すみません、寝過ごしました! バケツ持って廊下に立ってます!)

今回、配信で観たらガイド文にこういうフレーズがありました。
 「B級アクションの職人監督アルバート・ピュン」。
 こういう表現、いいね。ワクワクします。

 「B級映画」って言葉、本来は文字通り「ロー・バジェット(低予算映画)」の意味。さらに昔に遡れば、大作(A級映画)と二本立ての「添えもの映画」を指したわけで。
 集客が見込めないから予算がつかない。予算がないから、いい原作も買えない、スター俳優も使えない。何より撮影期間が短い。もちろんアクションや特撮に大金は掛けられない(CGが今ほど安く使えなかっただろうし)。

 そういう過酷な製作条件の下でも、オファーされたら何とかするのが「職人監督」。金は無いけど面白い映画、客が呼べる映画が撮りたい。そのために工夫する、知恵を絞る。監督自身も安いギャラなのに。「これぞカツドウ屋(活動写真屋)」ってカンジがするよなあ。

【 B級アクションは金のかけどころが大事! 】

 「ネメシス」の舞台は近未来2027年。人工臓器や四肢を体に組み込んだサイボーグと、生身の人間が入り混じった社会。
 これがまさに「職人監督が撮ったB級アクション」で思わずワクワクしてしまう。

○オープニングの銃撃戦を結構ハデに決めて「おっ!やるじゃん」と思わせる。掴みは大事!
○しかし、そのあとは急激にショボくなる。どうやらオープニングに予算の半分くらい注ぎ込んだらしい(笑)
○主人公アレックス・レインが拉致されて「お前の心臓に爆弾が埋め込んである、協力しろ」って迫られるシーン。ロケ地:田舎の村の路地裏。めっちゃ「説明的な会話」で観客に状況を伝える。経費削減!
○さらに安ホテルの室内でも延々会話が続く。(でも主人公の目ん玉を引き抜くシーンは頑張ってサイボーグ感を出してたな。)
○物語が路地裏や安ホテルで展開する中で、「ボスは世界征服を企んでる」って言われても笑っちゃう。

【 B級アクションはメリハリが大事! 】

○ここまで経費節減しておいて、中盤では壮絶なガンファイトふたたび!そういうメリハリ、大事だよ!
○お互いに機械のカラダ同士だから、一発や二発じゃくたばらない。火花を散らせて至近距離から撃ちまくり。全部命中!
○村のおばあちゃんだって負けてない。バッグに拳銃を携帯。震える手で「確実にトドメを刺す」あたり、クールだ!

【B級アクションは体力とアイディアが大事! 】

○終盤のジャングルも経費削減なロケ地。でも主役のアレックスと、ボーイッシュな女性マックスの二人は、結構身体能力が高い。跳んで、はねて、滝から飛び込んで。これぞ活劇だ。
○アイディアも満載!ホテルの部屋では銃で床をまあるく撃ちぬいて、主人公が3階から1階まで落ちて危機を脱出! セメント用の?長い滑り台も楽しそう。フィールドアスレチックみたいな仕掛けもあるぞ。「使えるものは何でも使う」精神がいいね。
○大笑いしたのは悪党のボスが機械の骨組み剥き出しで、飛行機にぶら下がるシーン。あれ、人形のコマ撮りだよね?1950年代の「特撮の王様」レイ・ハリーハウゼンの手法。これはオマージュなの!?

【 B級アクションはヒット作のパクリが大事! 】

 ところで。B級映画と言えば、過去のヒット作から「設定」なり「ビジュアル」なりをパクッてくるのが常套手段。
 この映画の設定は「人間VSサイボーグ」。サイボーグと言えば「ロボコップ」。あれも低予算、アイディアの勝利だった。
 「ブレードランナー」や「ターミネーター」はサイボーグじゃなくてアンドロイド(人間風の機械)。アンドロイドが恋心を持つ(ショーン・ヤング)とか、手足や顔の一部の機械が見える描写、目線の映像がスコープになってる(いまやテレビ「逃走中」でお馴染み笑)のは参考にしたんだろうな。
 反面、この映画で「近未来感」を出すために、サングラスをかけたり、ロングコートを着たりの演出は、その後の「マトリックス」に影響を与えてるかもしれない。

 というわけで。
 今回の「ネメシス」には、ちょっと珍品っぽい違和感を持つ方もいると思うんですが。それはおそらく「惜しくも近未来の世界観は足りなかった(脚本、ロケ地、美術のせいかなぁ)」ものの「火薬と筋肉を堪能させてくれる王道のB級アクション映画」として成立しているから、なのではないかと思うのです。日頃、A級映画(大作)だけ観てるとそれは無理もないですよね。

 ともかく、「火筋」としては前回の「フェイス/オフ」と対照的な映画のチョイス。お見事です!
 こういう低予算映画を観ると、改めて、ハリウッドに渡ったジョン・ウーが金をかけまくった気持ちがわかるわあ~笑

 今回も参加させていただき、ありがとうございました!