ベビーパウダー山崎

トラウマ/鮮血の叫びのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

トラウマ/鮮血の叫び(1992年製作の映画)
3.0
エンドロールに流れるバルコニーで踊る女性は拒食症に苦しみ事故死したダリオ・アルジェントの義理の娘。
アメリカで撮ったアルジェント映画だが、ホームのイタリアとは違って、アルジェントのみ100理解している血で彩られた空想劇に魔法がかからない。もっとアーシアに寄りきったサスペンスなら成功していたかもしれない。アルジェントは犯人視点から映画を組み立てる癖があるので、その加害者と被害者のバランスの悪さが映画を難しくしている。アメリカでは殺しの美学も娯楽として気軽に消費されてしまう。
中心が娘アーシアだからといって、そこに特別(過剰)な思い入れはない。どちらかというと、慣れないアメリカで物語を追うのに手一杯になっている。娘の叫びも裸も映画の一つ、己の表現に尽くしてまっすぐ撮っている。
あまり上手くいってないが、母と父の首は『歓びの毒牙』と同じく目の錯覚を狙ったトリックだと思う。犯人の動機から「首の切断」が絶対なので、その縛りありきで、殺しのバリエーションをいくつか用意してくるのはさすがアルジェント。父と娘で母の映画を撮ったという見方もできる。娘主演でアメリカ映画にチャレンジして、亡くなった義理の娘の姿を最後に映す、狂気と悲劇の「血」の映画。どこか寂しく切ないアルジェント作品。