1970年製作公開。脚本山田正弘 、吉田喜重。監督吉田喜重。衣装デザイン森英恵。
久しぶりに日本アートシアターギルドのマークを観た。田舎の高校生にとっては観ることのできぬあこがれの作品群だった。東京に行こう、東京に行きさえすれば。
本作もそんなあこがれの1本だった。
でも、さっぱりわからない。公開時に観ていたらatgのこと嫌いになったろうと思う。そんな飛び切りの寄せ付けない映画。
1952年、1970年、1980年が錯綜していることの混乱じゃなくて、そもそも岡田茉莉子夫妻が何を言っているのかさっぱりわからない。その娘といい募る木村菜穂とその父親と称する牧田吉明が岡田夫婦とするディスカッションもチンプンカンプン。1952年は党派による闘争失敗の原因を巡る査問なんだけれど随分と真っ正直な査問だ。わたしの知ってる70年中盤の査問はあれが査問だったのかというような陰湿なものだった。みんなで酒を飲みながら話をしているのだけれどその中にテーマを紛れ込ませて静かに聞き取っている奴がいる。そしてその幾人かは酒なんて飲んでおらず水を飲んでるという陰気さ。
今どきの学生が聞いたら、イヤ過ぎるわー、だと思う。
吉田喜重監督の美の美とでもいうようないつもながらの画面作り。画面のどの部分に登場人物を映しこむのか、そんなことばかりかんがえていたんじゃないかと思う。最後に、もうすっかり終わったのね、何もかも、などという台詞で終える。え?そして、DEAD END.と片隅に表示されるのです。
シネマヴェーラ渋谷 追悼特集 来るべき吉田喜重 にて