KnightsofOdessa

ビリー・ザ・キッド/21才の生涯のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

4.5
[主義と流儀の中で果てていく男たちの生き様] 90点

大傑作。これまで散々体制に楯突いた人間が、年齢と時代の変化を読んで、力と経験だけを残して体制側に付き、体制に楯突く過去の友人を逮捕しに東奔西走する。つまり、パット・ギャレットが追いかけているのは親友ビリー・ザ・キッドではなく、過去の自分なのだ。しかし、喧嘩を売られたら殺しちゃえばいいという単純だった昔に比べると、お偉方の機嫌を読みながらプライドも守りつつ仕事もしないといけないという、体制側に付くデメリットもあり、だからこそ今に至る決断をした過去の自分を正当化しようと、全てを守れる最も良い道としてビリーが逃げてくれることを願い続ける。その過程で敵になった昔の知り合いも、味方をしてくれた昔の知り合いも西部流に果てていく。特に印象的なのは、アラモサ・ビルとの決闘とも呼べない決闘だろう。主義/流儀の中で命を燃やす男たちの終幕という物悲しさは筆舌に尽くしがたい。
本作品で一番最初に"西部流"に死ぬのはパット・ギャレットだった。そして、彼が撃たれて死ぬ瞬間とのクロスカットで、保安官となった若き日の彼が登場する。彼は文字通り、映画の最初から死んでいたのかもしれない。ビリーを殺した後で映画の最後に撃たれるのも鏡の中自分(=パット)であり、本作品はパットの三回の死(保安官になる=過去を殺す→保安官として生きるために親友=過去の自分を殺す→肉体の死)によってまとめあげられている。

マイルズ・テラーみたいな優男がいると思ったら若かりしボブ・ディランだった。野生の七面鳥の群れを見て、"これがホントのワイルドターキーか"などと思ってしまったのだが、こんな重い映画ならそれくらいの不真面目な態度がちょうどいいような気もしてくる。
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