一人旅

ビリー・ザ・キッド/21才の生涯の一人旅のレビュー・感想・評価

4.0
サム・ペキンパー監督作。

西部開拓時代のアウトロー、ビリー・ザ・キッドの生涯を描いた西部劇。
哀愁漂う西部劇で、ペキンパーらしい派手な銃撃戦は控えめ。得意のスローモーション演出は散見されるが、ペキンパーの他作品と比べるとその主張は弱い。本作がガンアクションを主題としていないのは明白だ。
無法者ビリー・ザ・キッドと保安官パット・ギャレットは親友同士。だが、パットは保安官としての責務を果たすため、留置場から逃亡したビリーを執拗に追跡する。逃げるビリーと追うパット、双方の視点が交互に描かれる。殺人や強盗を繰り返した無法者として有名なビリーだが、私欲のために暴力行為を働くシーンはほとんどない。メキシコ人を暴行する悪漢を射殺する場面はあるが、それは義賊としてのビリーの一面だ。むしろ、ビリーを執念で追跡する保安官パットの方が暴力的人物として描かれている印象を受ける。パットを演じるのは名優ジェームズ・コバーン。その演技と強烈な存在感はさすがだ。怒鳴り散らしたかと思えば一転、娼婦たちと乱痴気騒ぎしてご満悦顔を見せる、喜怒哀楽の激しいキャラクター。クライマックスのビリーとパットの宿命の対決シーンでは、親友を裏切ったことで自己嫌悪に襲われる姿を熱演している。鏡に映った自分自身に向かって銃を発砲するパットの険しい表情が印象に残り、静かに去りゆくその後ろ姿が切ない。
親友同士でありながら、時代に引き裂かれる運命に巻き込まれたアウトローと保安官が織りなす詩的な西部劇。爽快さよりも虚無感と哀愁に包まれる。
そして、ボブ・ディランが手掛ける音楽も一般的西部劇のそれとは一味違ったものになっていて、作品に独特の雰囲気を与えている。
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