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ビリー・ザ・キッド/21才の生涯のmasayaanのレビュー・感想・評価

4.2
言うまでもなく、ビリー・ザ・キッドとは、単なる高名なアウトローにとどまらず、合衆国のヒップ・カルチャーにおける半ば神格化された存在である。それは、合衆国が、ヨーロッパからの高等移民ではなく、西を目指した犯罪者たちが切り拓いた国だという国体意識があるからだし、保安官に義務的に注がれるものとは違ったある種特別な敬意が、彼らに捧げられているからだ(この辺はジョン・リーランドの『ヒップ』という本に詳しい)。

彼らは、絶えず移動し続ける。彼らがもっとも恐れるのは、移動が終わること、すなわち家庭に縛られることであり、西部劇やアウトロー・ムービーを見るにあたっては、馬や車がどのようにして「止まる」のか、あるいは「止まらない」のかを見ると面白い。それが史実と比べて「リアル」なのかは関係なく、この『ビリー・ザ・キッド』という映画において、移動と殺しを続けていたキッドが、一度は捨てた筈の町に帰り、たった一人の女性を愛すというプロットが興味深い。なぜなら、それは、彼が死を受け入れたこと以外を意味しないからだ。

それを誰よりも理解する、元仕事仲間にして現保安官の男(とうの昔に移動することを止めた男)が、キッドの居場所を知った後、時間を稼ぐようにして酒を飲み散らかし、キッドが墓場に選んだ町へと重い足取りで向かい、寝床の周りで逡巡する終盤のシークエンスが素晴らしい。これは、まあ、何というか、そんなわけで男の子のための映画だと思います。最近の西部劇めぐりの元ネタでもある『Time Out (London)』のベスト50では、歴代2位に選出。後半がとにかく良いです。音楽と助演はボブ・ディラン(!)。

http://www.timeout.com/london/film/the-50-greatest-westerns
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