冷蔵庫とプリンター

ナポリのそよ風の冷蔵庫とプリンターのレビュー・感想・評価

ナポリのそよ風(1937年製作の映画)
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 マリオ・カメリーニ監督、ヴィットリオ・デ・シーカ主演のロマンティック・コメディ。

 『百万あげよう』で貧民に扮する大富豪を演じたデシーカが、今度は上流階級の女性に紳士のふりをして近付こうとする新聞売りという、これまた倒錯的な役柄を演じる。
 面白いのは、街で女中の娘とばったり再会してしまった主人公が、逆に徹底して素の自分を演じて別人だということを強調するところ。驚くべきことに、そこからもう一つの恋が駆動するのである。
 "身分違いの恋"と"身分相応の恋"が交錯する中盤の展開はなかなか見応えがあり、イタリア社会の文化資本格差が露わになる後半も素晴らしい。身分違いの恋を叶えようと、主人公はテニスを習うが、乗馬もブリッジも出来ない彼はなかなか上流階級に順応することができない。
 これを言っては元も子もないが、女中の娘役の女優(アッシア・ノリス)の方が明らかにヒロイン顔なので、どうオチがつくか大体想像できてしまうのが難点。
 また、ヒロインが最後まで真相を知らされず(「絶対話すな」がラストのセリフ)、恋愛が終始男性優位のゲームとして描かれている点にも批判の余地があるだろう。
 まあそれはそれとして、最後まで楽しめる良作だった。

 ところで、トーキー初期のイタリア映画は短尺でもインタータイトルやインターミッションが入るのが通例らしいのだが、今作は4部構成で3つもインタータイトルが入っている。イタリア人の集中力はどれだけ低く見積もられているのか気になった。