赤ちゃんパンダ

ニワトリはハダシだの赤ちゃんパンダのネタバレレビュー・内容・結末

ニワトリはハダシだ(2003年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

2020/12/1
シネマヴェーラ森崎東特集

この前みた森崎東のなんらかの映画(立て続けに見ているからタイトルがわからない)の台詞のなかで、「ニワトリはハダシだよ」という言葉が何度か出てきて、はじめて見たときはこの作品のことは知らなかったけど、この前久しぶりに再見して「ニワトリはハダシだってタイトルの映画を後にとってるよなぁ」と思っていた。

いままで見たことのある森崎東の映画は、調べてみるといちばん新しいものでも1985年の「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」だった。この「ニワトリはハダシだ」は2004年の映画で、2004年の映画らしく、往年の喜劇のタッチはなく、冒頭のクレジットの字も小さくて細い明朝体。むかしの映画は冒頭のクレジットがとにかくドーンとしている。
新宿芸能社シリーズの第一作で(多分)はじめて倍賞美津子を見たときから倍賞美津子がずっと好きだ。ほかにすきな女優は、芹明香とデコちゃんで、それぞれ演じる役柄、女優としてのキャラクターのようなものはばらばらだけれども、倍賞美津子は、気高い!と思う。つよくて、気高くて、本当に美しい。「女は度胸」の、最後の、「私、今日見た太陽の色、きっと忘れないなあ」という台詞とか、「あんたクソ食らえ節って知ってる?」という台詞とか、そして新宿芸能社シリーズ第一作の、キャンピングカーの話。この前久しぶりに見た「生きてるうちが花なのよ〜党宣言」の最後のほうの船を出すところとか。女優は演じているのであって、べつにほんとうにそのような人生を生きているわけではないのだけれど、今まで生きてきた、内側から滲み出る人間の美しさみたいなのがぱあっと外側に放出されるような美しさが倍賞美津子にはあって、すごくすきだ。
歳を重ねてからの彼女の出演作は一度も見たことがなかったし、写真でもみたことがなかったけど、すぐに倍賞美津子だ!とわかった。2004年。加瀬亮と一緒に、森崎東の映画に、倍賞美津子が出ている!2004年!ということがうれしくて、「地続きじゃん😭」と思う。
最後のほうのシーンで、息子がヤクザに覆いかぶされるところで、近くにあった包丁をなりふり構わず両手に持って、ヤクザに突き付け、ヤクザがピストルを構えて彼女に向けても少しも怯むことなくぴしゃりと立って包丁を突きつけるシーンが美しすぎて、あのときの、むかし映画でみた倍賞美津子の美しさとまったく変わらない美しさでそこに立っていて、胸がいっぱいになった。そのあと、息子に腕の太い脈がいっぱい通っているところを噛まれて顔を歪ませるところも。

どちらかといえばひねくれていて、ひねくれているものをすきになることの多い自分だけれども、倍賞美津子のまっすぐな美しさや強さのこと一生こころのなかにしまってときどき思い出しながら生きていく!と思う。
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