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エリ・エリ・レマ・サバクタニのgeluroのレビュー・感想・評価

4.5
映画館で鑑賞。BoidSound※とかいう音響で、最高だった。映画館で観たほうがいいやつだ。

この映画はノイズミュージックの入門編として最適だと思う。

10年前くらいに一度観たが、ほぼ覚えてなかった。
発症すると自殺してしまう奇病、レミング病の蔓延する世界で、浅野忠信と中原昌也のノイズユニットのライブを聴けば治るという噂を聞きつけた富豪(筒井康隆)が、感染してる孫(宮崎あおい)を連れて彼らの元を訪ねてくる。こう書くと、かなりバカバカしいというか、中2っぽい。

フィールドレコーディング、廃材を使った音の遊び、そしてライブパフォーマンス。2人が音を集めて遊んでる様は割とコミカル。しかし終盤の野外演奏は凄まじい。ノイズもすごいのだが、演奏の導入とラストに出てくる、クリーントーンのギターのコードもすごく美しい。そして映像とロケーションの素晴らしさ。北海道の広大な草っ原に簡易なステージを作り、真っ白な作業服のような服で演奏するロン毛の浅野忠信、真っ黒なロングのワンピースを着て真っ黒な布で目隠しされノイズを聴く宮崎あおい、救急車のそばからそれを見守る筒井康隆。ここは、この映画のしっかりしたカタルシスになってる。

しかしやっぱり浅野忠信の雰囲気はすごいというかずるいというか、やっぱそういうキャラか、と思わせますね。黙ってゴミとか土触ってるだけで成り立つ感じ。飄々としてるキャラで、周囲が話しかけても返事しないこと多くて、いや返事したれやとか思うけど、まぁあんな悲惨な世界で生きてて絶望的な過去も持ってるみたいやし、許したるか、くらいの気持ちで観ました。
あと海の波の音をフィールドレコーディングするとき、浅野忠信が波の音(これもすごい音)を聴きながら見ながら「やっぱかなわねぇな」的なことをぼそっと言うのだが、やっぱノイズに関してはそういう感じで、自然の暴力的な音に魅力を感じてるんやなと。若干カッコつけてて笑ってしまう。それ浅野忠信本人も言いそうやな。

物語よりも、音と映像のカッコよさを楽しみました。大満足です。

あと、エンドクレジットに阿部和重の名前があっだが、どういうふうに関わっているのだろう?

※boidsoundとは
爆音上映で知られるboidの音響調整チームが、音楽ライヴ用の機材を映画館に持ち込むのではなく、映画館にあらかじめ備え付けの機材のみを使って、映画一本一本の音を調整。耳ではなく身体全体で音を聴き、感じることを目指し音量を上げ、映画の音響のバランスをとることによって、映画と映画館と観客の身体の可能性を最大限に広げる試み。
とのこと。
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