カルダモン

エリ・エリ・レマ・サバクタニのカルダモンのレビュー・感想・評価

4.1
2015年の近未来。レミング病が蔓延した終末的世界で、ミズイ(浅野忠信)とアスハラ(中原昌也)の創り出すノイズサウンドが、誰に届けるわけでもなく静かに鳴り響く。感染者は自殺してしまうというレミング病に効果があると噂されたのはノイズミュージックだった。その音を求めて二人の元にやってきたのは富豪の老人(筒井康隆)とレミング病に感染した孫娘ハナ(宮崎あおい)。

登場人物はおよそ6人ほどしかいない。それ以外の人物が映り込むことはほぼ無いので他に生存者がいるのかさえわからない。ペンションを営むナビ(岡田茉莉子)の存在感が頭抜けて素晴らしい。ずっとペンションで料理を作ってきたけど初めて美味しいスープができたことを喜んでる。すごく普通のシーンだし特別なことはないはずなのに涙が出てしまった。wikiの情報によれば本作以降の出演作はないようなのだが何故なのか。まだまだ見たい人は多かっただろうに。

この映画ではロケ地もまたひとつの重要な要素。見渡す限りの草原や海を一望できる崖など、どこの国の物語かあやふやになるような風景が気持ちよく、原っぱでデカいスピーカーと音響機材や楽器を並べて青空の下でノイズサウンドをぶち撒けるシュールな光景が理屈抜きに目に焼きつく。

静寂と騒音が同時に聴こえてくるような感覚。視覚からも聴覚からもそれらの対比を同時に感じながらゆらゆらゆれる。物語そのものより耳と目に響くデッドorアライブがダイレクトに来る感じ、とても好きだった。