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イマジン/ジョン・レノンのvioletのレビュー・感想・評価

イマジン/ジョン・レノン(1988年製作の映画)
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高熱に浮かされながらも映画は観たい!ということで、とりあえず苦なく観られるビートルズを摂取。


ジョンレノンとはどんな人間だったのか。


「僕は反抗的な人間だが、社会に愛されてもいたい」ジョンレノンという人間は難解なようで、実は意外と単純なのかもしれない。聖人でもなければクズ野郎でもない。生身の人間でいるからこそ発言に説得力がある。当時の世間やメディアはそんな彼の発言や活動を偽善的だのなんだのと批判したわけだけど、自分のことを全く理解していない人に日々囲まれながら生きるのって本当に煩わしかっただろうなと…… ジョンレノンを一定以上知った人間は、みんな簡単にジョンに同情するのではなかろうか。"I just believe in me, Yoko and me"というGodの歌詞がいっそう染みる。自分とヨーコしか信じられなくなるのも無理はない。

母親を二度喪った傷とトラウマがずっと心の中にあり、人一倍"愛されたい"という思いが強いジョン。それでいて持ち前の反抗心と率直さを露わにし、敵を増やしていく。嫌われたくないからって本性を隠して善人ぶるよりも、よっぽどいい生き方だと思う。誰からも好かれてる人よりも、半分に嫌われもう半分には好かれてる人の方が絶対に面白いじゃん。結果ヨーコという全面的な理解者が現れたわけだし、彼の"自分に正直な生き方"に超憧れるね… 私は人に嫌われたくないようにいつも猫かぶっちゃうから…


ビートルズのメンバーがLSDをやっていることを、ジョージマーティンが知らなかったことが一番の衝撃だった。RevolverはおろかSgt Pepperの時点でも確証はなかったらしい。ジョージマーティンにバレたら禁止されるからって、隠れてこそこそドラッグを嗜むメンバーの姿は確かに容易に想像できるけど(笑)にしてもあんなサイケな曲を次々に持ってこられて、気付かないなんてありえるのか…?笑(マリファナの香りがほんのり漂うぐらいのRubber Soulとは明らかにレベルが違うし…)

しかも本人はトリップ体験がないのに、素人の私みたいな人でも察せるようなドラッグソングをプロデュースできてしまうとは… てっきりLSDのことは周知の上で黙認していたものだと思っていたから、これが真実なのだとしたら本当に恐るべきプロデューサーだよ。


シンシアとジュリアン、そしてヨーコとショーンのインタビューも見応えたっぷり。特にシンシアの話は貴重だった。初めて喋っているところを見たけど、とても物腰柔らかで寛容な人に思えたな。ジュリアンも見てると悲しくなるけど、「父ジョンが過去の過ちを認め、親子として自分との関係を修復しようとしていた」という事実を理解しているような発言をしていてどこか救われた。彼が命を奪われたあの時期は、ちょうど自らの父性に目覚めたターニングポイントだったというか、まだまだこれからって時だったから余計に悔やまれるんだ……


テキトーで気まぐれで感覚的ゆえ、言ってることがコロコロ変わるジョンだけど、「死ぬまで音楽を作り続ける」っていうことだけは自信をもって言っていた気がする。ミュージシャンとしての覇気とプライドを感じた。ビートルズがツアーをしなくなったのも、アイドル的に見られすぎて誰も音楽を聴いていないと分かったから。彼らはアイドルではいたくなかったし、ちゃんと音楽をやりたかった。ライブをやめてから、RevolverやSgtなどの革命的なアルバムをリリースして、バンドとしてしっかり成長してるのもかっこいい。

ビートルズの再結成について、「あるかもしれないね」と前向きな発言をしていたのも驚きだった。気分屋だからこそ、1夜限りの再結成とか、1曲だけ集まってレコーディングとか、普通にやりそう。もしあの時ジョンが死ななかったら、もし今でも生きていたら、世界とビートルズは一体どうなっていたんだろうか。

エンドクレジットのIn My Lifeに泣いちゃった。やっぱり愛とか人生とか、普遍的なモチーフをドラマチックかつ率直に語るジョンの楽曲が好きで好きでたまらない。最近ポールのソロばっかり聴いてたけど、再びジョンブーム来そう!
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