男らしい男と思ってるし女性蔑視やのに嫉妬に狂う軍曹。

この時代に男性同士のキスシーン😵

若い目つけられた人被害者やな。

この時代としてはかなり踏み込んで同性愛者の心の葛藤を画いた映画。

世界大戦後のフランス、とある町のアメリカ軍駐屯地に派遣された軍曹ロッド・スタイガーが若く美しい一等兵ジョン・フィリップ・ローに魅せられ執着していく。

スタイガーがジョンを見初めてからのアプローチがリアルだった。上官の立場を利用して学歴がないからディスクワークは苦手だ言うジョンを無理矢理自分付きの秘書にする。
ジョンに彼女ができると知るとデートの邪魔を、繁華街までジョンを車で送りなし崩し的な流れでデートに帯同、ジョンに話しかけまくり彼女を遮る笑
別の日は突然、ジョンに外出禁止を命じてデート潰す。
それでジョンに避けられると憎さ百倍とばかりに、ジョンと仲良い老兵を職務中の飲酒を理由に軍から追放するという厳罰に。
そんなことしてさらに嫌われて我を失ったスタイガー軍曹はジョンの唇を無理やり奪ってしまう😵💧
このシーン、クライマックスなんだけど時代を考えると本当に凄い！
監督も役者も偉いと思う。

こうやって書くと色に狂ったキモいゲイのおっさんの凶行にしか見えないけど、実際、画面で見る印象はまったく違っている。
スタイガーは10代で軍隊に入り数々の功績を残し軍曹になった。人生の大半を軍で過ごしてそれ以外何もスタイガーにはない。
戦地と軍隊内の世界しか知らず、自分の内面に向き合う機会がなかった。
だから、端から見れば完全に同性愛者なのにスタイガー本人は自分の感情が何のか分からないままジョンに執着し気持ちを消耗させ苦悩する。
この悲しくも不器用で繊細な心の機微をスタイガーの演技力で誰が見ても伝わるであろう見事な演技で表現する。
彼女と浮かれるジョンを憎々しげにみる目の演技、偶然、2人だけで任務に当たれることになる無邪気に喜ぶ表情、どれも完璧で厳ついおっさんのスタイガーが乙女に見えるんだよ笑
そして、人と心をふれ合う術を持てなかった孤独で気の毒な男に見える。
戦地で数々の功績を残し英雄として崇められても人生を掴みそこなった男の悲しみが痛いほど伝わってきた。

ロッド・スタイガーは今まで何でいっぱい映画出てるのか分からなかったけど、このソン・ガンホにも似たどこにでもいる風貌なのにあらゆる感情を鮮烈に表出できる演技力があるからなんだと思った。
厳ついおっさんに岡惚れされて大変なめに遭うジョン・フィリップ・ローは精悍で凛々しく人工的に整った美貌でこの役にはうってつけだった。
三島由紀夫とかのマチズモ信奉者には漏れなく好かれそうな笑

三島で思い出したけど、この映画のスタイガー軍曹は先天的なゲイってより後天的な感じがした。
フェティッシュな欲望があって男が好きなんじゃなくて、観念としての男性的な美意識を美徳とするうちに、それが孤独と融合してゲイ的な性愛に変化したような。

それと田亀源五郎さんにマンガ化してもらうといい作品になると思った笑

第二次世界大戦後、フランスの駐屯アメリカ軍基地に派遣された軍曹は、弛んだ軍規に辟易しながらも一人優秀な若い軍人と出会う。次第に芽生える二人の友情。しかし、軍曹にはそれ以上の感情が芽生え始めていた。

1968年公開当時、同性愛を取り扱う映画が少ない時代に撮られ、画期的な内容でありながら、同性愛者を悪役のように描き、あまり評価の振るわなかった作品。
この映画では、自分が同性愛者だと気付いていない軍曹が、好意を持つ部下に嫉妬し、異性愛を壊そうと描かれています。
また、現代のアメリカでも軍の内部で同性異性に関わらず上官からのセクハラが告発されている様です。

｢男なら〜であるべきだ｣のような考え方を〈toxic masculinity＝有害な男らしさ〉と言うそうです。
そういった考えやマチズモ（＝男性主義）が数十年前、まだ社会問題として取り扱われていなかった時代に映画として世に出すのは勇気が必要な事であり、それを演じきった名優ロッド・スタイガーの貫禄あふれる演技には感服しました。
見方によってその軍曹は、有害な男らしさやマチズモの被害者にも見えます。