若草

無法松の一生の若草のレビュー・感想・評価

無法松の一生(1958年製作の映画)
4.5
こういう話に弱い。
最後は泣けた。
話の筋は全然違うけど、心にずしんと残る切ない感じが「ごんぎつね」とかそういう系。

運動会のシーンが3人とも笑顔で楽しそうなのにすごく切なかった。
胸がギュッとなった。
この3人で家族というわけにはいかないんだろうか…こんなに幸せそうなのに…と思ってしまった。
人力車夫と祇園太鼓で三船敏郎の身体能力の高さを堪能できる。
旧制高校やバンカラが好きだから祝賀シーンはアツかった!

ボンボンがずっと松五郎を慕っていて良かった。
奥さんの丁寧な接し方と「松五郎さん」呼びもいい。
どれだけ親しくなってもあちら側とこちら側の差が埋まることはなくて「自分はこういう人間だから」と松五郎が弁えてしまうのが悲しい。
その不器用さ、純粋さ、まっすぐさが人間として美しい。

ボンボンも奥さんもいい人で、3人がそれぞれを大切に思っていて誰も道を踏み外さず間違いを犯さず、だからこんなに切ない。
外部からこの3人の関係が踏み躙られて終わるような展開ではなかったことが救いだった。

黒澤映画の三船敏郎と全然違って驚いた。
役柄が違うからというんじゃなく、なんか俳優として別の人物のように思えた。
上手く言語化できないけど。
撮る人によって俳優がこんなに変わることあるのか。

人力車の歯車の描写はわざとらしくてちょっと醒めた。
回想に入るとき磨りガラスっぽい質感の画面が挟まるのとか松五郎の走馬灯シーンは、いろいろな映像手法やりたかったのかな?
若草

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