幌舞さば緒

悪の教典の幌舞さば緒のネタバレレビュー・内容・結末

悪の教典(2012年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

バイオレンススリラーギャグ映画。ストレス無く生活していくうえで〝鬱陶しい邪魔者に値する人間を消し続けてきた32歳〟の高校英語教師、蓮実聖司がお送りするシリアルキラーショー。自身が在校する私立晨光学院町田高校にて文化祭前夜、教え子たちを相手に、恐らく初の大量殺人を行い、冷静さを保とうとしたものの連続殺人行為に高ぶり過ぎたため完全犯罪に失敗するお話。

ハスミンは挑戦し、抗い、挑む場面を自ら作り続けて〝俺一人で何処までバレずに遊べるだろうか〟的なノリで殺人を繰り返してきたかのようにも見える。殺し以外は演技であり、失敗した場合の流れもある程度理解したうえで行動してそうなので【反社会性パーソナリティ】や【境界性パーソナリティ】などの用語は彼には当てはまらないかもしれない。タイトルの【悪の教典】が一番しっくりくる。

映画序盤から危機感知能力が優れてる演出がされていたレイカは最初から最後まで独りにならず、雄一郎と二人組で死の文化祭前夜を生き抜き、〝1PLAY〟のハスミンではなく、常に〝2PLAY〟以上だったレイカと雄一郎に軍配が上がるところも良い。生存することができた女性レイカに対してハスミンは、相棒に相応しいほどのセンスを感じたからなのか彼女のことを最後「ムニン」と呼ぶ。

〝ああ言えばこう言う〟的なノリで状況に応じてコロコロと意見を変え、一貫性がなく、被害者ぶりながらも常に自分が有利な状況を組み立ててゆき、他者から見たら、いいとこ取りしたいだけに映ってしまうような人って世の中に結構いると思ってて…で、それに当てはまる人たちって実際のところハスミンみたいな悪の教典じゃないから、だいたい病んでる。本当は育ちが良いのに、己も悪行を繰り返してしまってる事に自覚できてなくて、サイコパス的な行いを積み重ねてしまいひとりで勝手に苦しんでる…みたいな。真相から目を逸らして、ハスミンのような悪に染まって行かぬよう注意していきたいと思う。


台詞メモ

「マグニフィセント…ですか?」「エクセレント!」「一応、本気で東大目指してるんで」

「目的なんてねえよ。単なる暇つぶし。定期考査の点数を無意味にしちゃうゲーム」

「で、またテスト終わったら旅に出るわ。まだ決めてない。いつもそん時の気分だよ」

「見てたのか?」「何を」「何してたんだ」「寝てただけっすよ」「濡れてるだろ」「ほっとけよ」

「すごくかっこいい…」

「何者なの?ここを貸してくれた友達って」「まあ、ゲイ…術家」

「ケイスケ、この事件調べるのもう辞めて。上手く言えないけどケイスケが心配」

「こいつはね、中々の優れ物なんだよ。傷口を焼き固めるから床を汚さないで済む。ただ、ビジュアル的に若干問題がある。皮膚が蜂の巣みたいに穴だらけになっていくのは気持ちが悪くてね」

「ヘーイMr.ハヤミ、YES or NO…グッドボーイ」

「素晴らしかったよ早水圭介。あんなに穴だらけになっても仲間を売らなかった。いや、いなかったのかな?いずれにしても、我が校に君のような生徒がいたことを教師として誇りに思うよ」

「終わりだクレイ。殺しは快楽か?俺は違う。罪と共に燃え尽きろ」

「Mr.ハスミ、ヴィンセントは気の毒な事をした。見ての通り自殺だ。遺書もある。本物だ。君がそう証言するからね」「断ったら?」「断らない。君はUS-VISITのブラックリストに登録される。もうこの国には入れない。いい子だ。引退したら穏やかに過ごしたい。二度と戻るな。いいな?ここは人でなしが住む街だがサイコ・キラーは歓迎されない」

「いつでもやれるぜムニン」

「ねえ、あの書き込み誰が書いたんだと思う?清田んちに灯油撒いたのタデだって」「誰だと思う?」「…分かんない」

「タデの携帯にあった画像さ、ユズカに送ってあげたらダメかな?二人が一緒に写ってるやつ。さっきリナが来た時、これでタデがいればクラス全員揃ったのにとかって涙ぐんでてさユズカ」「いや、ユズカには見せない方がいいな」「逆に余計苦しめることになるか。…なにそれ?」

「柴原先生にお土産だよ。大丈夫だからね」

「みんな、そのまま動かないでくれ」「あの…先生」「うん、ちょっと待ってね。1組か…」

「蓮美…おいアンタ何やってんだ!…ミヤ?」

「よく聞いてください。校内に不審者が侵入しました。繰り返します。不審者が侵入しました。危険なので絶対に一階には下りないようにしてください。パニックに陥ることのないよう冷静に行動してください。できるだけ上の階で。犯人は猟銃を所持しています。屋上に避難して鍵を掛けて助けを待ってください」

「行こ!蓮美の言う通りに!」「ちょっと待って!ちょっと待ってって!なんかおかしいよ今の!」「何が!?」「1階は危ないって言って蓮美は1階はにいるんだろうが!」「そうだよ!どうしよハスミン」「いやちげぇだろ!」「だから今ちょっとハスミン信用できねえかもしんねえぞ!」

「団結すれば助かる。分裂すれば倒れる。授業ではまだ教えてなかったっけ」

「これは久米先生の仕業なんだよ」

「相棒、もっとノリ良く行こうぜ。マック・ザ・ナイフ!」

「ねえ、タデってもういないんでしょ?アンタがやったってことだよね?」「…」

「相棒、時間がないようだ」

「先生…俺、東大…東大行かないと」「ん!?to die?」

「誰の靴だと思う?」「後で久米先生のせいにしようっての?」「Great!久米先生に警告したんだよ?生徒との恋愛は許されないって。それはどんなに…美しいものでもね。久米先生は逆上し生徒全員を道連れにしてマサヒコちゃんと無理心中を図った…ってのはあまりにも乱暴なストーリーだな」

「クラスのみんな、卒業おめでとう」

「男子生徒と不適切な関係にあった美術の久米教諭が猟銃を持って侵入し、私に暴行を働いて手錠を掛けて拘束した。そして、校舎内にいた生徒たちと体育教師を射殺した後、自殺。一方で体育教師からのセクハラに耐え兼ねた女子生徒が屋上から投身自殺。この二つを結びつけるのはかなりの難題かもしれない。まああまり深く考えても仕方がない。この状況に分かりやすい説明をつけるのは自分ではなく警察の仕事だ」

「君たち…よくあの中を生き延びられたね。担任として誇りに思うよ」

「ごめんよ。本当にすまなかった。これは全部神の意志でやったんだ。頭の中に響いてきた命令でやったんだよ。4組の生徒は一人残らず悪魔に取り憑かれていたんだ。これはみんなの魂を救うためだったんだよムニン。オーディンによろしく伝えてくれ」「神の意志?狂ってる…コイツ完全に狂ってる!」「違う。コイツはもう次のゲームを始めてるんだ」「…マグニフィセント」「行こうぜ相棒。俺たちに責任能力なんてありゃしない」
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