Melko

ジャングル大帝 劇場版のMelkoのレビュー・感想・評価

ジャングル大帝 劇場版(1997年製作の映画)
3.7
まさかこの作品をサブスクで見れる日が来るとは。
劇場で見て以来、24年ぶりの鑑賞。
ずっと見たかった。借りずにここまで来た。
大人になった今見て、たくさんの映画を見たからこそ気になった点とかあって、ちょっと邪魔してしまったけど、見たあの時の衝撃はまだ自分の中に残ってた。

内容やメッセージがどれも子どもにとっては難しい手塚治虫作品の中で、比較的分かりやすい部類に入る本作。ジャングル大帝には個人的に思い入れがあって。
小学校の学習発表会で、手塚治虫の漫画をチームに分かれてアテレコ発表する年があり、わたしのチームは「海のトリトン」と「ジャングル大帝」をアテレコした。
キャラのセリフから効果音に至るまで全て手作り。トリトンが水に飛び込む音を、水の入ったバケツに石投げてカセットテープに録音したり、レオが船から脱出してお母さんと離れ離れになるところは、ブリキの箱に砂を入れて揺らし録音。わたしはレオの母エライザの声を吹き替えた。漫画を持ってくることが禁止されてた小学校で、読めた漫画が手塚治虫だった。数シーンのアテレコで興味を持ち、ジャングル大帝を全部借りて読破した。息詰まる場面にダイナミックな構図。壮絶な命の物語。パンジャ・レオ・ルネの3代に渡る一大叙事詩。

そんな、ジャングル大帝にハマるずっと前に見た本作は、子どもながらに衝撃の場面の連続で、疫病でライヤが死んだり探検隊が死んだり、人間に襲いかかるライオン、強欲な人間、そしてまさかの終盤。
まだ小学校に入ったばかりの私は、終始ポカーン状態。上映時間も99分と少し長く、後半は飽きてしまったことが思い出される。
ただ、個性豊かな俳優たちが声を当てていたことは強烈に覚えていて、やはりレオ役の津嘉山正種の落ち着いた「ジャングルの王」たる威風堂々とした声が印象深い。

話のテンポはハッキリ言って良くない。
ムーン山への月光石探し、ジャングルでの疫病、人間と動物たちの対峙、ルネが人間界に行ってしまうくだり、その全てをミックスした結果、全てのシーンがサブリミナル効果みたいに何度も挟まるせいで画面に落ち着きがない。
そのせいで間も悪く、話がテンポよく進んでいる感が少なくもったいない。
構図や色彩は頑張っているがやはり天下のディズニーには遠く及ばないし、90年代のジブリはもっとすごい描写をしてる、と、技術面においてもうーんと思ってしまう。

だが、決してお子様向けではない本作が、アニメとルネ達の愛くるしさで子どもたちの興味を惹きつけ、彼らがこの作品に子どもの頃に触れ、自然界の厳しさと人間の善悪について学ばせることに本作の意義がある。
24年経ち、一つ一つのエピソードを噛み締めながら見ることができた。
好奇心だけではどうにもならないこともあるし、世の中には良い人・悪い人がいて、もらった恩は返すのだと。
最後のレオの語り、「ライヤ、ルネ、ルキオ…」のセリフは、24年経っても覚えてた。

ショッキングな描写もあるけど、子どもに見て色々感じてほしい作品。
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