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マイライフ・アズ・ア・ドッグのkomoのレビュー・感想・評価

4.0
1950年代のスウェーデン。イングマル少年(アントン・グランセリウス)は母と兄との3人暮らし。いつも母を困らせ怒られてばかりの不器用な日々を送っているが、『自分の人生はスプートニクに乗せられて打ち上げられたライカ犬よりまし』と、自分を励ましながら生きていた。
そんな日々の中、母が病を患い入院。イングマルは田舎へ預けられることとなった。
そこで出会ったサガ(メリンダ・キンナマン)というスポーツ少女が、思春期のイングマルにあらゆる影響を及ぼしてゆく。


【英雄の名とどろく】

初っ端から薄幸すぎるイングマル少年にやきもきしてしまいますが、彼は若年にして処世術を身につけています。
それは『スプートニクと共に飛ばされたライカ犬に比べれば自分の人生の方がマシだ』、と思うこと。
本作はスプートニク・ショックの時代のお話で、登場する大人たちは少なからず社会情勢に不安を持っています。
そんな中で、純粋で心優しい少年は、ただとにかく不幸な犬に心を寄せています。
時代を表すモチーフが絡むことで、少年の成長物語がより多角性を持ったものとなっています。

イングマルの人生を変える契機となるのは、男子として生きている快活な少女・サガです。
どんなに親しくなってもサガのような生き方はできないイングマルと、胸がふくらんできたことによって男子としてのサッカー生命が断たれようとしているサガ。
人はこんなにも幼いうちから、自分は自分以外の何者にもなれないのだということに気づいてしまう。
だからこそこのお話は、大人の胸にも響くのだと思います。

終わり方もとても良かったです。
自分が英雄になれるかどうかは分からないけど、自分と同じ名の英雄はこの世に存在している。
人は幸も不幸も、自分以外の誰かと重ね合わさずには生きて行けない。そんな宿命のお話だと感じました。
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