しまかす

マイライフ・アズ・ア・ドッグのしまかすのレビュー・感想・評価

3.4
『HACHI 約束の犬』『僕のワンダフル・ライフ』で観客の顔面をびっちゃびちゃのぐちゃぐちゃに濡らした稀代の犬監督ラッセ・ハルストレムの出世作。本作で描かれるのは悲劇的な喪失体験から自己回復を果たす少年の痛ましくも逞しい姿だ。作中に流れる空気はゆったりとしているが、病のために床に臥せがちな母親のヒステリーに怯える兄弟の悲痛な表情があまりに辛く、何度停止ボタンに手を伸ばそうと思ったことか。よかれと思ってしたことが空回ってしまうイングマルも可哀想ではあるものの、少なくとも彼にはシッカンがいたし、新しい土地では人々の暖かさに包まれた。私は他人の顔色を窺いながら悲しみを飲み込んで生きる兄の方がよほど心配だ。銃を他人に向けている時点で、既に危うさが顔をのぞかせているが……。彼も叔父のもとで十分かつ適切な愛を補完できただろうか。


児童期から思春期へと突入する子ども達の、いわゆる“性の目覚め”が多分に描写されている本作。某シーンは今のご時世では児童ポルノだなんだと騒がれかねない衝撃カットだなと不謹慎なことを思ってしまった。それにしても向こうの12歳というのは随分ませている。日本も今時はそんなものなのかな。


犬は家族が喧嘩してると吠えて止めに入るし、悲しんでいると傍に寄り添ってくれるんだよね。私も何度慰められたことか……昔を思い出してセンチメンタルな気分。
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