Omizu

野性の葦のOmizuのレビュー・感想・評価

野性の葦(1994年製作の映画)
3.9
【第20回セザール賞 作品賞受賞】
『ランデヴー』などの名匠アンドレ・テシネ監督作品。カンヌ映画祭ある視点部門に出品、セザール賞では作品賞、監督賞、脚本賞、若手女優賞を受賞した。

3人の男と1人の女が描く青春群像劇となっている。テシネの安定した演出手腕が光る秀作に仕上がっている。

興味深かったのがフランソワとセルジュの関係。フランス映画でありがちな三角関係ではなく四角関係になっているのが面白い。フランソワはセルジュに惹かれるが、セルジュが惹かれているのはマイテ。同性愛と異性愛が取り乱れる関係性のスリリングさ。

何か大きな事件が起こるわけではないが、それぞれの心情の機微を上手く描いている。各地でたらい回しされてきた年上の問題児アンリが不気味な存在感でかき乱していく様も面白い。

撮影も非常に美しい。川や日光などを使って心情描写を際立たせていくのが上手い。無名の役者たちを使ったというキャスティングも絶妙。

一夜を過ごしたはずのフランソワのセルジュのあっさりした描写もいい。それぞれが愛を渇望しながらも絶妙にマッチしない。夏の夜にみた夢のように過ぎ去っていく日々。彼らは本当の愛を得られるのだろうか。

テシネの安定した心理描写が心地いい快作。他の作品は今のところ観たことがないが、かなり力量がある監督だということがよく分かった。
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