Jeffrey

吶喊(とっかん)のJeffreyのレビュー・感想・評価

吶喊(とっかん)(1975年製作の映画)
3.0
「吶喊」

冒頭、時は慶応四年の明治元年。新政府はその命に従わない奥羽諸藩の追討作戦を開始する。戊辰戦争勃発、貧乏な東北の若者、官軍の密偵見習い、仙台藩のゲリラ組織、カラス組。今、鶴ヶ城へと向かうが総攻撃が始まる…本作は岡本喜八が百年前の青春群像を揺れ動く明治元年を東北の暴れん坊と薩摩の愚連隊が突っ走るエネルギッシュでユーモアで軽妙なテンポの物語を、昭和五十年にATGと喜八プロで、監督した時代劇で、この度DVDを購入して再鑑賞したが面白い。本作の製作に俳優で初の喜八プロダクションに入りプロデューサーを務めた岡田裕介は本作の主演を兼ねている。

その他には岸田森、田中邦衛、仲代達也などが出演している。岡本喜八としては「肉弾」の延長上にある作品と言っており、幕末の激動期に生きる若者たちの姿を軽妙なユーモアで描いた青春時代劇としては私は好きである。ただ彼の作品では傑作が他にたくさんあるので、見比べてしまうとそれまでだが、この作品はギルド作品では秀作である。当時、この作品を見た私はタイトルの意味がよく理解できなく調べた。吶喊とは突撃の時にあげる時の声の意味との事だ。いかにも喜八らしいタイトルの付け方だ。岡本喜八は「肉弾」の後、脚本を自らATGに持ち込み、主役の一人万次郎を演じているプロデューサー岡田裕介とタッグを組み、短い撮影期間と低予算の中でこの傑作を作り上げたとのことである。

さて、物語は時は戊辰戦争のころ。奥州、安達ヶ原で千太と言う若者が、官軍参謀の情婦、お糸を追いかけている。ところが官軍の密偵見習いの万次郎が邪魔に入り、お糸を奪われてしまう。千太へひょんな事から、仙台藩の下級武士、細田十太夫が博打うちや百姓を集めて組織するゲリラ隊、カラス組に加わることになった。情勢は官軍の圧倒的優勢の中で、カラス組も多数の死傷者を出した。一方、万次郎は官軍の軍用金を奪う計画を立て、千太を利用してまんまと成功する。このことに怒った彼は万次郎に殴りかかるが、近くを通りかかった会津の一隊に請われて落城戦前の鶴ヶ城にたどり着く。やがて、官軍の総攻撃が始まるが…と簡単に説明すると感じで、佐藤勝の乱世と言う音楽がカッコいい。

この映画で描かれている若者は、単純バカの熱血な奴らばかりである。彼らが大きく時代が変わろうとする転換期の中で右往左往する有り様を通して、無意味な戦争の中にあっても精神を懸命に生きる若者の心情が浮き彫りにしたと評された一本で、いつの時代でも純情でみっともない青春を岡本喜八は軽快なテンポで描いている。本作は低予算ながらに結構な火薬量を使っていて爆撃シーンが多いのとグロテスクな描写がある。昔話的な大団円の終わり方で面白い。ナレーターの中谷一郎は相変わらず声質がいい。冒頭と終盤にしか出てこない坂本九の特殊メイクも良かった。 テル役の千波恵美子が可愛い。
Jeffrey

Jeffrey