千年女優

怪談の千年女優のレビュー・感想・評価

怪談(1965年製作の映画)
4.5
妻を捨てて良家の娘と再婚した貧しい武士が祟られる『黒髪』。口外無用を条件に女の霊に命を救われた男の悲痛な運命を綴る『雪女』。平家の墓場で夜な夜な演奏を繰り返す盲目の琵琶法師を巡る『耳無芳一の話』。中川佐渡守の家臣の関内が茶を飲む際に水に浮かぶ男の顔に纏わる『茶碗の中』。日本各地に伝わる怪談を描く怪談映画です。

戦争三部作『人間の條件』や時代劇『切腹』らで国内外で高く評価された小林正樹が小泉八雲が上梓した怪奇小説の内の四編を映画化した1965年公開の作品で、『切腹』に続いて二作連続でカンヌ国際映画祭審査員の特別賞に輝くとアカデミー賞でも外国語映画賞にノミネートされて今なお語り継がれる日本映画の代表作のひとつとなりました。

多種多様な怪談を選りすぐった上で重厚な演出と共に綴っていて、強欲や嫉妬、傲慢に憤怒といった人のいかんともしがたい性にミステリアスに迫っていきます。美術に一切の隙はなく、美しい構図の映像で捉えられた物語はおどろおどろしい一方で魅惑的な雰囲気に満ち満ちていて、日本の怪談と歴史の豊かさを捉えている格調高い一作です。
千年女優

千年女優