イチロヲ

怪談のイチロヲのレビュー・感想・評価

怪談(1965年製作の映画)
4.0
小泉八雲編纂の日本怪異談集から、「黒髪(=和解)」「雪女」「耳なし芳一の話」「茶碗の中」を映像化している、オムニバス形式のホラー映画。筆者の愛読書「怪談 小泉八雲短編集」(偕成社文庫)と比べる限り、ほぼ原典通りの脚色になっている。

精巧な舞台美術セットと前衛音楽家・武満徹の仕事により、フォトジェニックかつシュールな映像世界が構築されている。ロケ撮影とシンクロ録音が採用されていないため、迫っ苦しさを覚えるが、「ニッポンの怪談」の様式美が映像に詰め込まれている。

「この世ならざるもの」を取り上げて、現世と来世のオーバーラップを叙情的に描いていく、ジャパニーズ怪談の原点にして頂点。結末が存在していない物語を最後にもってきて、「怪異はあなたのすぐ傍にもあるかも」を提起する手法にハイセンスが感じられる。

ラフカディオ・ハーン、アーネスト・フェノロサ、クエンティン・タランティーノ等は、忘却されつつあった日本美術にスポットライトを当てて、再評価へと導いてくれた外国人たち。彼らに、感謝の意を忘れてはいけない。
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