枯井戸星

ドラえもん のび太と鉄人兵団の枯井戸星のネタバレレビュー・内容・結末

4.7

このレビューはネタバレを含みます

子供の頃は「これより面白い映画はないに違いない」と思っていた。
実際ある程度正しい。

24.03.27
見返した。そして点数を4.3から上げた。
こういうのを見ると、自分はもう平伏すしかないのである。

非戦の映画ではないのが重要である。ドラえもんたちも実戦は辞していない。ロボットの歴史を人間に一度例えた以上、現在の戦争のために、メガトピアの歴史を起点から改竄するなどという行為が正当化されるのかという疑問がこの歳になると湧く。
しかしリルルが天国を作るためと言って、発明を手掛けることによって、このエゴは正当化される。つまりメガトピアの目線に立てば、リルルという特異点によって新生するために、3万年もの間歴史を紡ぎ、地球へ侵略しにきたのだというシナリオになっているのだ。

鏡面世界で戦った気になっている男たちと、いち早く現実世界に戻り知性で戦う女性たちという、あまりにも強いメッセージ。

リルルの改心が、のび太との決闘において初めて表出するという劇的な構成も見事という他ない。

かくして傑作と呼ぶ他ない本作であるわけだが、それにしても凄みのあるのは、リルルは天使だ、というラストの一連のくだりである。というのは、歴史を改竄した以上、記憶が引き継がれる謂れはないのだから、理屈で言えば、最後リルルがのび太に顔を見せるのは、奇跡、神秘としか言いようがないのである。しかしリルルはのび太を知っているだろう。つまり理不尽に見えるタイムパラドクスも阿頼耶識的な世界観を前提して考える必要がある。主題歌にもあるように、「わたしがふしぎ」と呼ぶしかないところまでSFというものを追い込んでいる。文字通りリルルは天使であり、これは神話なのだ。

また、youtubeのコメント欄で、リルルが「人間になりたい」とは言わないのが素晴らしいと書いている人がいて、それは本当にそうだと思った。