すべてはエンディングのために
約100分の中に、鏡面した2つの世界、宇宙からの侵略、タイムパラドックスといった王道SF要素を贅沢に入れつつ、人と機械の垣根を超えた友情を描いた作品です。
•贅沢なSF要素
ある日、巨大ロボットが家に届くところから物語が始まり、誰も人間がいないもう1つの世界を作り遊ぶ。なんとも少年心をくすぐる展開。
のび太達がスーパーから好きなものを持って来て食べるシーンは特にワクワクします。
そのワクワクを失速させることなく、今度は宇宙からの侵略者が来ることを知り巨大ロボットで戦う。
最終的にはドラえもん史上最もハードに世界が滅ぼされる描写も交えつつ、塹壕に入ったのび太達の防衛戦が熱い。
•機械の少女と人間の少女の交流
しずかが、自分を襲った機械の少女リルルを助けたことを通じて種の垣根を超えた友情が生まれる。
リルルは、しずかの話から機械が人間と同じような歴史を辿ってきたことや、理屈に合わないことをするのが人間であることを知る。
次第にリルル自身も理屈に合わない行動をしていき、戸惑いを見せるのですが、その描写が良い。
自分の本来の任務を遂行するため、のび太達から逃げるリルル。しかしのび太に見つかったところで「私を打って!」という。
つまりは止めて欲しいけど、任務もあるため自分では言えない。という心の揺れを描いて見せている。
最終的には、人間を侵略することは悪いことだと司令官に訴え、捕まる。
やや駆け足ではあるですが、二人の交流から心の揺れ動きが見事に描かれています。この部分が土台となって素晴らしいラストに繋がります。
•要素はすべてエンディングのために
上記したSF設定や友情は、すべてがエンディングに繋がっていきます。
のび太達が絶望的な戦いへ身を投じる少し前に、しずかがタイムマシーンを使って歴史を変えてしまう策を思いつきます。
タイムパトロール真っ青の策ですが、リルルも今の故郷がもっと良くなればという思いで協力する。
自身の存在が消えながらも、しずかと手を繋ぎ友達になってから消えて行くリルル。機械が心を持っていることを、自身の行動で示した姿にグッときます。
瞬間の盛り上げだけで見せ場を作るのではなく、このシーンのために積み上げた要素が大きな感動に繋がっていると思います。
最後に。
この映画のオープニングとエンディングは、街を空から俯瞰するシーンなのですが、オープニングとエンディングでスクロールが逆になっているんですね。
地球に来たリルルと去って行くリルルの対比なのでしょうか。にくい演出です。