本作は精神分析医ミッシェルに次々と降りかかる災難を描いたブラック・コメディである。ヒッチコックの『ハリーの災難』みたいな映画といえば分かりやすいだろうか。
ひとつの過ちが次々と間違いを生んでゆく様はただひたすらに滑稽で、とりわけ死体が絡むシーンはどれも爆笑ものである。
ミッシェルを演じたジャン=ユーグ・アングラードが上手いんだよなあ。こんな変な役ばっかり演じている印象ではあるが…。
また青いハイヒールと赤いソックスの対比、青い部屋などの色彩美に関するこだわりはさすがベネックスといったところか。
「その赤い靴下似合わないわよ」
「そうやって髪を払うのがステキ」
「横になれば人生もつらくない」
などなど、フランス映画らしいセリフまわしも堪能できる。墓地でのダッチワイフネタも笑えた。
と、ここまで書いておきながら面白いかと聞かれれば全体のストーリーとしてはさほど面白くないんだよねこれが。この内容で2時間は長すぎる。あと20分ほどカットして欲しかった。
それでも嫌いになれないのは私自身が知らぬうちに青の世界にずるずると引き込まれていたからなのかもしれない。