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ユリシーズの瞳のあのレビュー・感想・評価

ユリシーズの瞳(1995年製作の映画)
3.7
またとてつもない重量の映像で観客をしばきにくるサディスティックなアンゲロプロス大先生でした。今回は主人公と一緒に国境を越えた旅ができるので、この「旅が終わったかと思ったら、旅の始まりだった」感が本当に画面を超えて伝わってきました。中でも旧ユーゴに入ってからがすごいですね。ベオグラードに行ったら、フィルムはサラエヴォにあるという展開になったところで、バーのテレビがボスニア戦線の情勢悪化を伝えるところ、ここに前のバラバラになって船で遠くに運ばれるレーニン像=共産主義のシーンが(観客の頭に)フラッシュバックしてきて、幾つもの亀裂ができて進むべき方角を失ったユーゴの現状と重なる。本当にこの時代にしか撮れない表現に、監督の使命感を感じました。
しかしやはりそこらへんで女を食い散らかしまくるハーヴェイカイテルの不自然さがどうしても目につきますね。別に性描写は嫌いではないですが、この監督の性描写はどこか浮いてる気がします。同じハーヴェイカイテルでも、ピアノレッスンの方はその辺の描き方に成功してると思いますし...。
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