不在

ユリシーズの瞳の不在のレビュー・感想・評価

ユリシーズの瞳(1995年製作の映画)
4.4
ホメロスの『オデュッセイア』の主人公オデュッセウスは、英語にするとユリシーズとなり、長い旅を意味するオデッセイという言葉はこの『オデュッセイア』から来ている。
本作での国境を超える長い旅は、オデュッセウスの軌跡と重なっている。

この旅は世紀の初めに撮られた幻のフィルムを探すのが目的とされているが、実際は監督自身のルーツやアイデンティティを探る内面の旅なのだ。
長く苦しい旅の終わり、一つ目のサイクロプスと戦ったオデュッセウスのように、主人公は映写機の光、最初の眼差しと一人対峙する。
しかし求めていた答えはそこには無かった。
探求の旅は永遠に終わらない。
人生の明確な答えもないままに、繰り返される悲劇をただ語り継いでいくしかないのだ。
不在

不在