初のテオ・アンゲロプロス。
バルカン半島を映す映像美に圧倒される。
今まで観てきた映画の中でも随一の映像美だった。
はじめはマナキス兄弟のバルカン半島最古の映画、幻の3巻のフィルムを追うロード・ムービーという具合で物語が展開されるが、次第にそれは回顧、戦争、紛争、政治等、バルカン半島を取り巻く様々な出来事を描いてゆく。
正直20世紀におけるヨーロッパ、バルカン半島について詳しくなさすぎて物語のほとんどを理解できなかったように思う。
それでも主人公の体験してきた悲哀がひしと伝わってくる為、そうした情勢を知らずとも面白かった。
また、名目上は映画探しの旅であり、その旅に伴って物語が展開するので非常に物語が入ってきやすかった。
本作は20世紀の世紀末に公開された作品であり、20世紀をありありと写している。
はじまりがあれば終わりがある。
戦争ではじまった20世紀のヨーロッパ、バルカン半島。
20世紀に大いなる隆盛を見せた映画の始まりと共に物語が進んでゆく。
あまりにも物語の構築が巧すぎる。
そしてラストはあまりにも衝撃的。
あまりにも深く白い霧の中、何発もの銃声が鳴り響く。
心臓が強く締め付けられる恐怖心。