もとまち

ユリシーズの瞳のもとまちのレビュー・感想・評価

ユリシーズの瞳(1995年製作の映画)
4.3
過去から未来へ、あるいは現在から過去へ。ワンショットの中でシームレスに移り変わる清流のごとき時間。最古のフィルムを追い求める旅路は、そのまま不可逆な戦争の歴史を辿る道筋と重なり合う。霧に包まれた間だけ戦火は止み、束の間の平和を享受する街の住民たち。雪に覆われた瓦礫の上で行われるオーケストラの美しくも残酷なことよ。その直後に襲い掛かる惨たらしい暴力の嵐には言葉を失った。長い長い道程の先にあったのは、真っ白なフィルムと救いがたき歴史の反復。ハーヴェイ・カイテルのくしゃくしゃな泣き顔がここぞとばかりに繰り出される。エンドロールの背後では空転する映写機の音。
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