さくらえび

ユリシーズの瞳のさくらえびのレビュー・感想・評価

ユリシーズの瞳(1995年製作の映画)
4.1
「魂でさえも自分を知るためには自分の心の底を覗き込む」プラトンの言葉が画面に映し出され、次いでギリシャ人映画監督マキナス兄弟により撮られたバルカン半島最初の映画が画面に映し出される。それを鑑賞する映画監督A(ハーヴェイ・カイテル)は、これが本当に最初の眼(まなざし)なのかと問いかける。彼はこう考える、誰も信じていないが、この作品以前に撮られた幻の3作品があるという噂は事実だ。
こうして失われた最初のフィルムを探す旅が、混迷のバルカン半島とマキナス兄弟の100年を追体験する旅が、始まる。
各国を巡る中で、亡くなった自分の母親を含む4人の女性(演じているのは四人共マヤ・モルゲンステルン)と出会い、別れる。
国境を越える度にバルカン半島の悲しみと出会う。

詩的だった。叙情詩であり、叙景詩であり、また叙事詩でもあったと思う。
170分でバルカン半島の100年を巡る。悠久の時間を旅したような感覚に陥った。

アンゲロプロスは言う、人々は最初の眼を失くしていると。無垢な眼を失くしていると。それを取り戻そうとしたアンゲロプロスの挑戦のようにも思えた。