浜

ユリシーズの瞳の浜のレビュー・感想・評価

ユリシーズの瞳(1995年製作の映画)
5.0
アンゲロプロス監督で1番好きな映画です。

複雑な構成やシーン、美術の美しさに関しては書ききれないので置いておくとして。ただの映画監督Aが、まぼろしのフィルムを探すと言う名目でユリシーズの旅路と自分のルーツを辿る映画でした。そこには街の美しさと壊れた街の儚さ(これらが全部セットなんて凄すぎる、狂ってる)時代の移り変わりも表現されていて、その寂しさが胸につんと刺さります。特に、幼少期のホームパーティーのシーンの長回し、そこに現れていた時代の流れは、私にとっては息をするのも忘れるくらい流動的で印象的なシーンでした。列車で面影の母に出会うシーンも、とても綺麗でした。まぼろしのフィルム、アイデンティティ、ルーツといった、不確かで魅力的なものをどうして人は追わずにいられないんでしょうか。物語が進むにつれて、人格の輪郭がぼやけていくAも、ぜんぶ、ぜんぶが1つ3時間の映画に収まっていました。

この映画をつまらないと思う人の気持ちも、わからなくは無いです。私もアンゲロプロスの映画を初めて観賞したときは寝ました。笑 でも、何度もじっくりと見ると気づくことは沢山あると思います。Aに感情移入させてみて、移り変わる時代と自分とを照らし合わせてみたりして…私にとってはとても慈しむことのできる映画です。ずっと好きだと思います。
浜