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ザ・フォッグのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ザ・フォッグ(1980年製作の映画)
3.9
 波の緩やかな海面に接する静かな港町アントニオ・ベイ。この街は間もなく生誕100年を迎えようとしていた。この地の漁師たちの間では代々、100年前の伝説が受け継がれてきた。濃霧が深い夜、海岸沿いの明かりを頼りに停泊しようとした「エリザベス・デーン」号が岸壁に激突。船は大破し、全ての乗務員は亡くなる悲惨な海難事故だった。それ以来、霧が深く立ち込める夜には、船員たちの亡霊が街を彷徨い歩くと言う。地元ラジオ局KABでは、今日もDJのスティーヴィー・ウェイン(エイドリアン・バーボー)の素敵な声色が街を活気付かせていた。時刻は0時、4月21日に日付が変わると、霧に包まれた何かが動き出していた。『ジョン・カーペンターの要塞警察』や『ハロウィン』の抑制されたトーンはそのままに、近代的なホラー映画からゴシック調のホラーへ挑戦したカーペンターの意欲作。主人公は当時カーペンターの妻だったエイドリアン・バーボーであり、『ハロウィン』のジェイミー・リー・カーティスも再び登場し、近代的な立ち向かう女性像を好演している。

 日付が変わった瞬間、奇妙な出来事が次々に起こる静かな街。教会のマローン神父(ハル・ホルブルック)を発端としながら、そこにニック・キャッスル(トム・アトキンス)や彼とヒッチハイクで出会ったエリザベス・ソリー(ジェイミー・リー・カーティス)らが立ち上がる。だが物語を進めるのは、DJのスティーヴィーの役割である。シングル・マザーでありながら息子を家政婦のコブリッツさんに託し、街の災害情報を伝える様子はある意味、頭が下がる。ダン・オバノン!!(チャールズ・サイファーズ)からのテレフォン・セックスに近い甘い誘惑に付き合いながらも、一貫して強い母であろうとする。霧に包まれて姿がはっきり見えない敵の姿は真っ先に『ジョン・カーペンターの要塞警察』のゾンビのようだった敵たちを連想させるし、DJ(ディスクジョッキー)や議長、警察官や神父などある意味プロフェッショナルであるべき人々がそれぞれに真っ当であろうとする姿が泣かせるし、それは家政婦さんやヒッチハイクで出会った若いカップルも例外ではない。いたいけな少年に向けられた言いようもない恐怖、エリザベス・ソリーとエリザベス・デーン号の奇妙な符号、海難事故にミスリードさせるまさかの結末が泣かせる。
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