半兵衛

フィツカラルドの半兵衛のレビュー・感想・評価

フィツカラルド(1982年製作の映画)
4.1
手塚治虫の映画エッセイ集にこの作品が取り上げられていたので興味が湧き久々に鑑賞。

物語を楽しむというより、かつて実在したと言われるペルーの山奥にオペラハウスを作ろうとした成金男がおこなった数々を実際に再現しようとするプロジェクトX風のドキュメンタリー映像の記録を楽しむ作品。そしてそんな男の狂気がヘルツォーク監督に取り憑き、船で山を越えるべく木々を伐採して丸太を配置し、それで少しずつ移動していく様はテレビサイズの映像でもその無茶苦茶な行為と危険な様子がダイナミックに映し出されており思わずハラハラしてしまう。

子供のように途方もない夢を実現させようとする主人公はまさにキンスキーのはまり役(当初はジャック・ニコルソンだったらしいけど)、そんな彼の数少ない理解者で愛人のクラウディア・カルディナーレの明るさもいい味。

ただ原住民の生活や船で移動する様子などドキュメンタリーの部分を執拗に撮っているので、ドラマ目当てで見に来る人には冗長かなと感じたりもする。でもそうしたディテールをしつこく追っていったからこそ、後半の展開に心動かされるのだと私は考える。

ラストは苦いけれど、出来ることをやりきった爽快感と祝祭テイスト溢れる終わりかたに何故か心が温かくなる。きっと監督やスタッフ、キャストもこんな常識はずれなことをやってのけた満足感がこのエンディングに投影されているのかも。そして葉巻をくゆらせるキンスキーの顔!
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