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ターザンのrensaurusのレビュー・感想・評価

ターザン(1999年製作の映画)
4.7
『本能の滾り』。ああ、俺生きてるんだな。とさえ感じさせられてしまう圧倒的な躍動感。本能が喜ぶのを是非感じてほしい。

本能から湧き上がるものをありありと描き出し、大自然の中を颯爽と駆け抜ける極上の3D×セル・アニメーションとフィル・コリンズの壮大なサウンドトラックによって滾り漲る生命のエネルギーを全身に感じられる傑作。母の優しさ、父の強さ、愛の芽生え、未知への好奇心。全ての源に生命力を感じる。それらが観る我々にも呼応し感動すること間違いなし。

本作は、『リトル・マーメイド』『アラジン』『美女と野獣』に並ぶルネサンス期の作品の一つですが、これらに全く引けを取らないクオリティです。むしろアニメーションを見る喜びは本作がずば抜けていると言って良いでしょう。ディープ・キャンバスという当時の最新CG技術によって奥行きを生み出し、立体感のあるジャングルを飛び回る表現には強烈な楽しさがあり、そのリアリティによって没入感も持たせてくれます。

その上にフィル・コリンズ&マーク・マンシーナの劇伴。大胆にもディズニーお得意のミュージカル要素を排し、世界観の壮大さを演出しつつ、登場人物の心情にフォーカスした歌詞がキャラクターの感情を引き立てます。それが顕著なのが、『ストレンジャーズ・ライク・ミー』。人間を知らずに育ったターザンの知的好奇心がみるみる沸き立つ心情がダイナミックに表現されており、アニメーションも重なって泣けます。泣きます。泣くに決まってます。

そしてキャラクターの描き込みが丁寧なのも素晴らしい。一人一人、一匹一匹に自然な役割と行動があり、どれも魅力的。特に魅力的なのはやっぱりジェーン。大天使。ひょうきんでおてんばでありながら、感受性が豊かで知性や品性まで持ち合わせた才女です。今までのディズニーヒロインにはなかった魅力のあるキャラクターで大好きです。

ヴィランはハンターのクレイトン。文明人として野生生物を見下した振る舞いをする人間ですが、殺意の象徴のような猟銃を装備していて画面に映るたびに一番『野蛮』な存在に感じます。

生き生きした物語を優しく包むのは母ゴリラ、カーラの愛情です。どんなときも優しく見守ってきたカーラ。ターザンが別れを感じたシーンで放つ、「どんなことがあっても、あなたが僕のお母さんだ」というセリフの素晴らしさたるや。美しい…。

おわりに、本作はもっと評価されて然るべきだと感じるので、未見の方は是非観てほしいです。
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