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ロジャー・ラビットのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

ロジャー・ラビット(1988年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

アニメキャラクターたちが生活する街・トゥーンタウンの人気者ロジャー・ラビットの妻・ジェシカの浮気調査を私立探偵のエディが撮影所長から依頼される。ロジャーは妻が気になり、仕事に身が入らないのだ。その調査の最中、浮気相手のマーヴィンが何者かに殺害される事件が発生。ロジャーが第一容疑者とされてしまう…。

自分もまだまだ子どもだったのに「実写とアニメの合成」と聞いて子ども向けだと思って劇場で見なかった作品。
TVでも昔は放送されていたが、ちゃんと見たのは初めてかもしれない。
トゥーンタウンの人気キャラクター・ロジャーと私立探偵エディの活躍を描くファンタジー・コメディの「怪作」である。

アニメパートは冒頭からテンションが高い。
ロジャー主演の「キッチン騒動」の賑やかさがド派手。
子どもの頃に見た「トムとジェリー」の他、ワーナー・ブラザースアニメの何倍ものスピード感と子どもでも引いてしまいそうな「なんでそうなる?」ドタバタアクションと破壊。
赤ちゃんを追ってボロボロになったロジャーは、どうでもいいNGを出す。
「おれのせいか?」と文句をたれる共演のベビー・ハーマンは見た目は赤ん坊だが、葉巻をふかして女性のスカートをめくるスケベ親父。
それを人間が撮影スタジオで撮っている…とは、何とふざけた光景か。
アニメキャラクターが3次元に実在し、無理矢理人間と共存している世界である。

しかし、ストーリーの骨子はフィルム・ノワールの形を借りている。
実質的な主役はボブ・ホスキンス演じる私立探偵エディ。
エディはかつて弟や恋人ドロレスと共に探偵事務所を営んでいたが、5年前にアニメキャラが落としたピアノで弟を亡くしてからはすっかり酒浸り。
笑うことも忘れ、トゥーンを憎む落ちぶれた中年に成り下がっていたという設定はいかにもハードボイルド。
それをシブくダンディーな俳優ではなく、背も高くないハゲかかったボブ・ホスキンスが演じるというのもギャグだ。
浮気調査を最初は断ろうとしたが、バーのツケが払えないほど金に困っていたため仕方なく引き受けるというのも情け無い。

フィルム・ノワール定番のやさぐれた私立探偵で、苦虫を噛み潰したような無愛想な中年がアニメキャラクターに振り回される姿が笑えるポイント。
ジェシカが出演するナイトクラブ潜入したエディは、妖艶なジェシカの色気に圧倒されて、口をあんぐりと開けて見惚れてた後、おもちゃ会社社長アクメとの密会を写真に収めるが、それは浮気ではなく、ただの手遊び。
「何の調査やねん?」とツッコミたくなるが、ロジャーは他の男といるだけでショックで泣き崩れる。
翌朝、頭上から落ちてきた金庫に頭を潰されて、アクメが何者かに殺害される事件が発生。
嫉妬に駆られたロジャーが容疑者だが、助けてくれとロジャーがエディに泣きついてくる。
ハードボイルドなストーリーとアニメキャラクターのウザいほどの大騒ぎとのギャップがもうミスマッチを通り越して破茶滅茶である。

エディは成り行きからロジャーと一緒に行動することになり、ともに身の潔白の証明をするために行動を開始するあたりから、凸凹コンビのバディ映画の様相となる。

大金で当選した厳格で冷酷な判事ドゥームが、死神のような黒ずくめの衣装で分かりやすい悪役として登場。
アクメ殺人事件を担当することになり、トゥーンたちを溶かして殺す溶解液を武器にロジャーに迫ってくるサスペンス。
誰がなぜアクメ社長を殺したのか?というミステリーも加わる。
アニメキャラクターたちがギャグばかりかますが、案外ストーリーラインはしっかりしているので、オチが気になっていい年した大人でも見続けることができる。

結局、事件は土地を買い占めてリゾート化しようとしたドゥーム判事の策略だと分かるのだが、ドゥーム自身もトゥーンで、しかもエディの弟を殺した仇だと分かる。
クライマックスはエディたちとドゥームのトゥーンタウンでの大混戦。

腕が飛び出すハンマー、インスタント穴など、ドラえもんの秘密道具のような愉快なアイテムがただのギャグではなく伏線として生きるのも「おぉ…」と感心する。
遂にエディはドゥームを倒してトゥーンタウンを救うハッピーエンドだ。
救われたトゥーンタウンのキャラクターが総登場してエディたちに感謝する幕引きは、あれだけうるさかったのに可愛らしく見えて微笑ましい。

アニメと実写の合成という発想がまず(イカれていて)面白いし、実際に映像化した技術は素晴らしい。
一見イロモノ映画のようでありながらしっかりと設定を活かしたストーリーと脚本。
アニメならではの人間ではあり得ない動きで笑えるコメディ要素も多い。
現代ではCGを駆使して実写の人間があり得ない動きをしているのが納得いかない作品も多いが、アニメだからアリだよねとアクションシーンも力技で納得させられる。

浮気とか地上げなど内容はちょっと子ども向けではないのが難点だが、老若男女が楽しめるような意欲作となっている。

エグゼクティヴ・プロデューサーはスティーヴン・スピルバーグとキャスリーン・ケネディ、監督は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のロバート・ゼメキス。
なるほど、この製作陣ならばと、ワーナーとディズニーが混在するアニメ・キャラクター著作権も許可が出たのだろう。
作品の中に大人と子どもの心が同居する。
製作陣のいい大人が「真面目にふざけた」作品だ。
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