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キャット・ピープルのくりふのレビュー・感想・評価

キャット・ピープル(1942年製作の映画)
3.5
【いつの間にか魔女狩り】

リメイク版のメジャー感から、知っている人は知っている作品でしょうか。久しぶりにDVDにて。1942年作のリーズナブル・ホラー。

戦時中、恐らく予算も少なく不自由な中で、巧く仕上げたよなあ、と改めて感心したし、一部、今見てもコワイな、と堪能しました。

内なる性欲や憎しみが発火すると“豹変”してしまうと言い張る女と、彼女に惚れ、はじめは共に歩もうとする男の物語。途中まで、“どこか不穏な”ラブストーリーとして進みます。

本作の実体は、ホラーの皮を被った女性映画ですね。そう捉える方が、今ではずっと楽しめます。

ヒロイン、シモーヌ・シモンは可愛らしいが、そう猫っぽくもないね。ちょっと変わった女に見えるが、底深さは感じさせないのが残念。

一方、彼女が健気に悩む間に、夫婦に割り込むアリスが面白い。いるよねこう…生々しい女。表向きはバリキャリ美人で、優柔不断な夫がふらふらと、愛の道に迷うことになり…さあ、ホラーの開幕です。

何度見ても映画的に素晴らしいのが、“夜のプール・アタック”シーン。この状況は実際にコワイですよ、水の中だし。よく出来たシチュエーションだから、リメイク版でもまんま、流用されていましたね。

でも、本作で描かれる一番の恐怖は“性嫌悪症”に悩む女性が、いつの間にかネグレクトされてしまうことでしょう。これ、魔女狩りと被りました。

いちばん小さな、家庭内魔女狩り…。

十字架が正義のツールとして使われない…不倫カップルの逃亡用…ことからも、根底にはキリスト教の呪縛を置いているかなと。戦時中だから、長く夫を待つ、妻の貞操感も絡んでいるようにも思います。

監督ジャック・ターナーの映像感覚は、今見ても時に、光るものがあります。リマスターされた精緻なモノクロ画面を、劇場で堪能したいものだなあ、と思いました。

<2019.7.23記>
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