猫脳髄

キャット・ピープルの猫脳髄のレビュー・感想・評価

キャット・ピープル(1942年製作の映画)
3.5
RKOが誇るヴァル・リュートン製作の低予算ホラー第1弾。監督のジャック・ターナー(トゥルヌール)は初期の3作品を担当している。

リュートン・ホラーは低予算ゆえに一定のフォーマット下で製作され、製作日数も限られていたにもかかわらず高いクオリティを備えているのが特徴である。当時のユニヴァーサル・モンスターズとは対照的に、スタティックで人間ドラマ中心のホラーを得意とした。ノンクレジットでリュートンが脚本に参加することもあったらしく、ホラー作品ではまさに名プロデューサーと言っていいだろう。

セルビアからアメリカに移住したシモーヌ・シモンが、動物園の黒豹の檻の前で、彼女に一目惚れした男から声をかけられる。出身地の村に伝わるキャット・ピープルへの変身譚から結婚を躊躇する彼女だったが、押しに負けて結ばれる。しかし、夫は結婚早々同僚と不倫し、次第に不安定になるシモンは精神科医を受診するが…という筋書き。

シモンが、果たして伝承のキャット・ピープルなのか、心を病んだゆえの行動なのかという揺らぎを孕みながらサスペンスを高めていくという趣向が、この時代(戦時中!)に確立しているとは恐れ入る。浮気な夫やその愛人、精神科医らに疎まれる移民女性による復讐譚は、アメリカが虐げる「他者」の問題を浮き彫りにする。

ちなみに、動物が大騒ぎするペットショップのシーンが、アルフレッド・ヒッチコック「鳥」(1963)にそのまま援用されているのは発見だった。
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